何年も前からコンビを組んでいるような阿吽の呼吸で。
プレミアリーグの首位を快走し、夢のクアドルプル(4冠)の達成が早くも取り沙汰されているチェルシー。好調を支える要因は、デエゴ・コスタとエデン・アザール――、ではない。
もちろん、13試合で12得点を挙げているD・コスタと電撃的なドリブル突破で違いを作り出しているアザールが、大きな貢献を果たしているのは間違いない。ただ、それ以上に欠かせない存在が、ネマニャ・マティッチとセスク・ファブレガスだ。
ジョゼ・モウリーニョ監督はずっと構想していた。マティッチとセスクを主軸としたチームをだ。
26歳のマティッチは、モウリーニョと同じ出戻り組だ。スロバキアのコシツェから最初にチェルシーにやって来たのは2009年8月。しかし21歳の駆け出しは、世界的スターが居並ぶメガクラブの分厚い選手層に阻まれ、本領を発揮しきれないまま3年後にベンフィカへと売却された。
モウリーニョの第一次政権とマティッチの最初の在籍期間は重なってはいない。モウリーニョはマティッチが加入する2シーズン前にオーナーのロマン・アブラモビッチと袂を分かっていた。14年1月のマティッチ再獲得は、ベンフィカでのプレーぶりをチェックしていたモウリーニョのたっての希望だった。
フィジカルと機動力を駆使して中盤の防波堤となりながら、正確なパス出しでポゼッションの起点として機能するマティッチは、モウリーニョ曰く「完璧なセントラルMF」だ。今シーズンの初黒星を喫した15節のニューカッスル戦は、このセルビア代表が出場停止で不在だった。この結果は決して偶然ではない。チェルシーは見るからにインテンシティーとエネルギーが不足していた。
セスクは、モウリーニョがある意味もっとも身近に触れてきた選手だ。チェルシーの第一次政権ではアーセナル、レアル・マドリー監督時代はバルセロナと、モウリーニョにとってセスクはつねに宿敵の主力だったのだ。分析に分析を重ねて、裏の裏まで知り尽くしているだろう。
かつての天敵を味方につけるのは、いわばモウリーニョの真骨頂だ。例えば、サミュエル・エトーがそうだ。第一次政権では、エトーがいたバルサとチャンピオンズ・リーグ(CL)でそれこそ死闘を繰り広げ、敵対した。それがインテルの監督になるとバルサからエトーを迎え、彼を前線の主軸に据えて3冠を達成するなど黄金期を築いている。セスクはまさに第2のエトーになろうとしている。
5-0でシャルケを圧倒したCLグループステージ5節の試合後だ。キャリアで最高のフットボールをしていると、セスクはそう語った。その理由は、自分にもっとも適したポジションでプレーできているからだと、暗にモウリーニョの起用法を称え、感謝した。
マティッチとセスクは、まるで何年も前からコンビを組んでいるような阿吽の呼吸で、それこそ思うままに中盤を支配している。つねに互いを意識しながら、一方が攻撃的に振る舞えば、もう一方がそのカバーに回る。完璧に近い補完関係だ。スムーズに、バランスよく仕事を遂行する2人の姿は、まるで精巧なスイス時計の動きを見ているようだ。
それだけに、2人の代役は不在だ。クアドルプルの快挙を達成できるもできないも、すべてはマティッチとセスクに懸かっていると言えるだろう。ともに健在でシーズンを戦い抜くことができれば夢は近づく。翻って、怪我など不測の事態でどちらか一方でも長期離脱を強いられなどしたら、1冠の達成さえ危うくなるだろう。
【記者】
Dan LEVENE|GetWestLondon.com
ダン・レビーン/GetWestLondon.com
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されていた地元紙『フルアム・クロニクル』でチェルシー番を務め、現在は同紙が休刊して全面移行したウェブ版『GetWestLondon.com』で引き続き健筆を振るう。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
【翻訳】
松澤浩三
もちろん、13試合で12得点を挙げているD・コスタと電撃的なドリブル突破で違いを作り出しているアザールが、大きな貢献を果たしているのは間違いない。ただ、それ以上に欠かせない存在が、ネマニャ・マティッチとセスク・ファブレガスだ。
ジョゼ・モウリーニョ監督はずっと構想していた。マティッチとセスクを主軸としたチームをだ。
26歳のマティッチは、モウリーニョと同じ出戻り組だ。スロバキアのコシツェから最初にチェルシーにやって来たのは2009年8月。しかし21歳の駆け出しは、世界的スターが居並ぶメガクラブの分厚い選手層に阻まれ、本領を発揮しきれないまま3年後にベンフィカへと売却された。
モウリーニョの第一次政権とマティッチの最初の在籍期間は重なってはいない。モウリーニョはマティッチが加入する2シーズン前にオーナーのロマン・アブラモビッチと袂を分かっていた。14年1月のマティッチ再獲得は、ベンフィカでのプレーぶりをチェックしていたモウリーニョのたっての希望だった。
フィジカルと機動力を駆使して中盤の防波堤となりながら、正確なパス出しでポゼッションの起点として機能するマティッチは、モウリーニョ曰く「完璧なセントラルMF」だ。今シーズンの初黒星を喫した15節のニューカッスル戦は、このセルビア代表が出場停止で不在だった。この結果は決して偶然ではない。チェルシーは見るからにインテンシティーとエネルギーが不足していた。
セスクは、モウリーニョがある意味もっとも身近に触れてきた選手だ。チェルシーの第一次政権ではアーセナル、レアル・マドリー監督時代はバルセロナと、モウリーニョにとってセスクはつねに宿敵の主力だったのだ。分析に分析を重ねて、裏の裏まで知り尽くしているだろう。
かつての天敵を味方につけるのは、いわばモウリーニョの真骨頂だ。例えば、サミュエル・エトーがそうだ。第一次政権では、エトーがいたバルサとチャンピオンズ・リーグ(CL)でそれこそ死闘を繰り広げ、敵対した。それがインテルの監督になるとバルサからエトーを迎え、彼を前線の主軸に据えて3冠を達成するなど黄金期を築いている。セスクはまさに第2のエトーになろうとしている。
5-0でシャルケを圧倒したCLグループステージ5節の試合後だ。キャリアで最高のフットボールをしていると、セスクはそう語った。その理由は、自分にもっとも適したポジションでプレーできているからだと、暗にモウリーニョの起用法を称え、感謝した。
マティッチとセスクは、まるで何年も前からコンビを組んでいるような阿吽の呼吸で、それこそ思うままに中盤を支配している。つねに互いを意識しながら、一方が攻撃的に振る舞えば、もう一方がそのカバーに回る。完璧に近い補完関係だ。スムーズに、バランスよく仕事を遂行する2人の姿は、まるで精巧なスイス時計の動きを見ているようだ。
それだけに、2人の代役は不在だ。クアドルプルの快挙を達成できるもできないも、すべてはマティッチとセスクに懸かっていると言えるだろう。ともに健在でシーズンを戦い抜くことができれば夢は近づく。翻って、怪我など不測の事態でどちらか一方でも長期離脱を強いられなどしたら、1冠の達成さえ危うくなるだろう。
【記者】
Dan LEVENE|GetWestLondon.com
ダン・レビーン/GetWestLondon.com
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されていた地元紙『フルアム・クロニクル』でチェルシー番を務め、現在は同紙が休刊して全面移行したウェブ版『GetWestLondon.com』で引き続き健筆を振るう。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
【翻訳】
松澤浩三