過去18度の対戦で一度も勝利を奪うことができなかった世界王者ドイツ相手に、10月11日、ポーランドがついに白星を手にした。初対戦から実に81年、ようやく掴んだ歴史的勝利である。
 
　シュート数はドイツが22だったのに対し、ホームのポーランドは４。試合内容もこの数字通り、ほぼ一方的にドイツが支配していた。個々の技術、チームの組織力でも完全に世界王者は上回り、ボールを奪えばあっという間にポーランド・ゴールに迫り、きわどいシュートを放った。
 
　いつドイツにゴールが生まれてもおかしくない状況で、スコアレスが続いたのは、ドイツ攻撃陣にやや判断の拙さがあったのは事実だが、それ以上にポーランドの最終ラインの身体を張った守備、そしてGKヴォイチェフ・シュチェスニーが見せた圧巻のスーパーセーブショーが大きかった。
 
　このアーセナル所属の守護神は、ドイツによるシュートの雨あられを全てストップ。一度でもゴールを破られれば、堤防が決壊するかのごとく大量失点もあり得たがだろうが、牙城は最後まで崩れなかった。
 
　1974年西ドイツ・ワールドカップ予選で、イングランドとのアウェーマッチにおいて神がかり的なセーブを見せて本大会出場の立役者となったポーランド・サッカー界の英雄、ヤン・トマシェフスキをして「私がウェンブリーで見せたプレーよりも素晴らしいプレーだった」と言わしめたシェチェスニーの好守は、攻撃陣にも勇気と活気を与えた。
 
　ポーランドの枠内シュートはわすか３。守備でも世界一のドイツ相手ではゴール前にボールを運ぶこともできずにいたが、ある意味、これが幸いしたのかもしれない。守備機会のほとんどなかった名手マヌエル・ノイアーは感覚が鈍ったのか、51分、中途半端な飛び出しでアルカディウシュ・ミリクのヘッドを許してしまった。
 
　そして試合終了間際の88分には、一瞬のスキを突いてセバスティアン・ミラがシュートを突き刺してダメを押す。総攻撃に出たドイツの裏を突いての追加点は、弱者が強者相手に戦ううえでの理想的な展開であり、まさに痛快な勝利でもあった。
 
◎ポーランドのドイツ戦全結果
1933年12月３日（A）　●０-１
1934年９月９日（H）　●２-５
1935年９月15日（H）　△１-１
1936年９月13日（H）　△１-１
1938年９月18日（A）　●１-４
1959年５月20日（A）　△１-１
1961年10月８日（H）　●０-２
1971年10月10日（H）　●１-３
1971年11月17日（A）　△０-０
1974年７月３日（C）　●０-１※１
1978年６月１日（C）　△０-０※２
1980年５月13日（A）　●１-３
1981年９月２日（H）　●０-２
1996年９月４日（H）　●０-２
2006年６月14日（A）　●０-１
2008年６月８日（A）　●０-２
2011年９月６日（H）　△２-２
2014年５月13日（A）　△０-０
2014年10月11日（H）　○２-０
※１＝西ドイツ・ワールドカップ・２次リーグ
※２＝アルゼンチン・ワールドカップ・１次リーグ（大会開幕戦）
※ドイツ統一前は西ドイツとの対戦結果を掲載
通算成績：１勝７分け11敗