フィッカデンティ監督インタビュー第二弾!「日本サッカーについて」

カテゴリ:Jリーグ

片野道郎

2014年10月03日

プロとしての成熟にひとつの違いが。

プロ選手の育成について語る言葉は示唆に富んでいた。 (C) SOCCER DIGEST

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 好評を博したマッシモ・フィッカデンティ監督のインタビューを、第二弾としてここにお届け!
 
 FC東京を率いるイタリア人指揮官は、日本のサッカーをどう見ているのか――。その言葉は示唆に富んでいた。
 
 
――フィッカデンティ監督は以前からJリーグや日本のサッカーに興味を持ち、追い続けてきましたよね。でも外から見るのと、その中に入ってひとりの当事者として仕事をするのとでは、見えてくるものはまったく違うのではないかと思います。
 
「日本のサッカーはいま、成長の途上にあります。そのスピードはとても速いし、戦術やメンタリティーという点では、南米のそれよりもヨーロッパのそれの方に向かって進んでいると思います。日本のサッカーはある時期、南米の影響を受けてとりわけテクニックを重視する傾向がありましたよね。テクニックに優れた選手が多いのはその結果でしょう。実際、日本の選手たちの平均的なテクニックのレベルは、イタリアよりもずっと上ですよ。しかし、戦術的な側面や、勝利に執着するメンタリティーの部分では、まだまだ成長の余地があると思います」
 
――今回のワールドカップは、はっきりとそれを示してくれたように思います。
 
「たしかにね。印象的だったのは、日本代表に対する期待がとても大きく、その分、グループリーグで敗退した落胆や失望も非常に大きかったことです。開幕までは、グループリーグを勝ち上がるのが当然という空気すらありましたからね。しかし今回のワールドカップでは、私の母国イタリアだけではなく、スペインやイングランドなどという強豪国も敗退している。日本の人々は、ワールドカップで勝ち進むのはとても難しいのだということを、まだ十分に理解していないのかもしれません。
 
 その難しさはどこにあるのか。問題はテクニックの上手い下手ではありません。戦術、メンタリティー、勝利への執着心、最後まで耐え抜く精神力、そして自分たちの力に対する正しい自覚といった側面です。こうした戦術やメンタリティーの部分で大きな向上を遂げることは、テクニックのレベルを上げるよりもずっと難しい。しかしすべてはそこにかかっているんです。
 
 ワールドカップのように、巨大なプレッシャーの下で、しかも一度も失敗が許されないという状況の中で結果を出すためには、そうした状況を経験してそこから学んでいく以外にはありません。ただ、現状のJリーグにそれだけのプレッシャー、結果に対するシビアな要求はないというのも事実です。代表レベルでさらに力をつけていくためには、やはりヨーロッパのようによりレベルが高くプレッシャーの大きな環境で、それを経験して乗り越えた選手がさらに増えていくことが必要だと思います」
 
――監督という立場から見た時に、イタリアのサッカー選手が持っていて日本のサッカー選手に欠けているものがあるとすれば、それは何でしょう? 逆に日本の選手が持っているけれど、イタリアの選手が持っていないものは?
 
「その質問にひと言で答えるのは難しいですね。ひとつ言えることがあるとすれば、プロフットボーラーとしての成熟という点かもしれません。イタリアではプロクラブの育成部門で16歳、17歳になると、完全にプロ予備軍として扱われます。外国人も含めて才能のある選手が揃っているから競争は激しいし、毎週の試合でも何よりまず結果が要求されるから、プレッシャーも大きい。その中で育ってきた選手が18、19、20歳になった時には、もちろんベースのクオリティーがプロとしてのレベルに達していることが前提ですが、戦術やメンタリティーというレベルでもすでにプロとしてやっていく準備はできています。
 
 しかし、日本では高校、大学というアマチュアの環境の中で選手が育ち、プロクラブの育成部門で育っても、18、19歳でトップチームで通用するだけの成熟を遂げている選手はほとんどいませんよね。武藤(嘉紀)が1年目にもかかわらずレギュラーに定着したのは、すでにそれを持っていたからですが、彼はもう22歳です。そしてプロの世界でプレーを始めたこの1年足らずの間に、すごい勢いで成長を続けている。
 
それは、U-18から上がってきた野澤(英之)についても同じです。一概に言うことはできませんが、もし彼が大学に進んでいたら、プロのトップチームと一緒にトレーニングする機会も少なく、2年、3年を無駄にした可能性もあります。大学を終える22歳になってから改めてプロとしてのスタートラインに立つというのは、日本の才能あるタレントたちにとっては大きなハンデキャップかもしれません」
 
――ここでもやはりポイントは、テクニックではなく戦術やメンタリティーの成熟という話になってきますね。
 
「それこそまさに、本来は15、16歳から18、19歳のあいだに身につけるべきものですからね。もちろん、日本の社会において大学を卒業するというのがいかに重要なことか、その点でイタリアとは選択肢のあり方が違うということはよくわかっています。しかし、技術だけでなく戦術やメンタリティーの部分を、もう少し早い年代からインプットしていくことは、プロとして通用する選手を育てる上では重要だし、その部分が日本にとってハンデキャップになっている部分があることは否定できないと思います」
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