ベトナム代表の日本人監督、三浦俊也がアジア大会で得たもの

カテゴリ:国際大会

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2014年10月02日

仁川で期待以上の成績を残したチームから見出したリオへの夢。

2大会連続でグループリーグ突破を果たしたものの、前大会を上回ることはできなかったベトナム。同国のアジア大会における最高成績は、南北統一以前に南ベトナムが挙げた1962年ジャカルタ大会での4位(統一後はベスト16)。 (C) Getty Images

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 U-23ベトナム代表監督は、報道陣の質問をひとしきり受けた後、去り際にそっとこう呟いた。
 
「あー、ちきしょう」
 
 声の主は三浦俊也。かつてJリーグでは大宮や札幌などで指揮を執ったことのある、理論派で知られる監督である。2011年に甲府の監督を退いた後、しばらくは解説者を務め、今年5月からベトナム代表の監督に就任。リオデジャネイロ五輪を目指す代表チームの監督も兼任する2年契約を結び、異国の地で指導者としてその腕を磨いている。
 
 仁川アジア大会に参戦したベトナムは、初戦で強豪イランを4-1で撃破。続くキルギス戦も1-0で勝利し、決勝トーナメント進出を果たす。迎えたラウンド16ではUAEと対峙するも、1-3と力負け……。ただ周囲の予想を裏切り、16強入りを成し遂げたその手腕は高く評価できるはずで、今回の結果も含め、新たなチャレンジについてそれなりの充実感を覚えているかと思いきや、「いやいや(笑)。負けたから頭に来ていますよ」と勝負師の顔をのぞかせた。
 
 大会を通じて、選手たちの成長には「びっくりしている」と言う。
 
「まずはナショナルチームを見ていて、8月の20日過ぎにこのチームを立ち上げたけど、技術的なギャップを感じて、これは厳しいかなと思っていた。でも、指導していくうちに、若い選手ってこんなに簡単に伸びていくんだなと実感した」

 いかなるアプローチで若いチームを伸ばしたかを聞けば、「普通に練習しただけ」と煙に巻く。ただ、選手たちから言わせると、普段のリーグ戦と比べるとインテンシティは高いらしく、試合に臨む姿勢にも言及した指導では、1-0で勝っていても、簡単に時間稼ぎをするようなプレーは固く禁止しているという。
 
 海外という舞台で監督業に従事するなか、「外国人として行くと、周りがリスペクトして、特別扱いしてくれる」と笑顔を見せる。そしてサッカー熱の高いベトナムでは「ザッケローニ状態ですよ」とジョークを飛ばす。
 
 ベトナムのサッカー事情については、トレーニングを通じて、当初に感じたレベルよりもポジティブな感触を受けており、「(UAE戦を)見ていて分かったと思うけど、勝てなくはないかな、っていう感じだった」と確かな手応えを掴んでいる。サッカー界を取り巻く環境は完璧には整備されていないようだが、下部組織やスカウティングの充実などに着手するなどして、全体的な底上げの必要性を感じているという。
 
 大会後にはA代表チームを率いて、日本でのキャンプを実施。トレーニングマッチも多く組まれており、10月上旬から11月中旬にかけて、Jクラブや学生チームと対戦する予定だ。その後、ASEAN諸国による国際大会である「スズキカップ」に参戦し、6年ぶりの優勝を目指して戦う。海を渡り、指導者としてステップアップを目指す日本人監督の挑戦に注目だ。

取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)

選手としてはトップリーグでの経験なしにJリーグの監督にまで昇り詰め、現在は海外の代表監督に。“開拓者”三浦監督には今後も注目していきたい。 (C) Getty Images

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国内リーグがJリーグとパートナーシップを結んでいるベトナム・サッカー界。熱狂的なファンは以前から多く、代表チームにも大きな関心と期待を寄せている。 (C) Getty Images

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