【J2】「昇格できない」ギラヴァンツ北九州のそれでも痛快な大躍進

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2014年09月15日

エリア前後を隙間なく埋め、千葉の多彩な攻めを「梱包」。

2ゴールを決めたエースの池元。56分の自身2点目は、素晴らしい流れから生まれたファインゴールだった。 (C) SOCCER DIGEST

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 湘南ベルマーレが歴史的快進撃を見せるJ2で、意外なチームが3~6位のプレーオフ戦線を牽引している。J1昇格経験のないギラヴァンツ北九州だ。
 
 9月14日の31節では、アウェーでジェフユナイテッド千葉に3-1と快勝。3位のジュビロ磐田に勝点差1に迫った。
 
 もっとも、6位以内に入っても北九州はプレーオフに出られない。というのも債務超過とスタジアムが基準を満たしておらず、J1ライセンスを交付されていないからだ。
 つまり北九州はお金のない弱小球団。その躍進は高く評価されるべきだろう。
 
 千葉戦では7割近くボールを支配され、自陣で守る時間が長かった。シュート8対24、コーナーキック2対11という数字も、ホームチームの攻勢を物語る。
 
 だが、ほとんど危なげなかった。北九州は最終ラインと中盤の2ラインがペナルティーエリア前後を隙間なく埋め、個人技のある千葉の多彩な攻めを「梱包」してしまったからだ。マークがずれる場面も、ほとんどなかった。
 
 ただ守っただけではない。北九州は奪ったボールを確実につないで千葉の出足をいなし、裏を突いた。
 千葉はつねに8人あまりが敵陣に攻め込んでいる。つまり、ボールを奪った北九州の選手は多くの敵に囲まれていることになるが、彼らは闇雲にクリアしたり、慌てて敵に渡したりせず冷静にボールをつないだ。
 敵のプレッシャーが弱ければ、中盤の風間宏希、小手川宏基あたりが、すっと前を向いてボールを持ち出す。不用意に失う場面は皆無だった。
 
 10番をつける小手川は、こう語る。
「ボールを奪ったら、まず2トップを見ます。そこに出せれば、しっかりとキープしてくれるし、2トップに出せなければ近場でつなぐ。それが落ち着いてできているんです」
 
 そう、守備だけでなく、つなぎの判断、技術は見事だった。
 エースの池元友樹が決めた1点目、3点目は、同じような形から生まれた。
 前線がキープすると、気がつけば中盤、サイドバックがフォローに上がってきて、サイドでトントントンと小気味よくパスをつなぐ。「ほお」と思って眺めていると不意にスピードアップ、ペナルティーエリアの角付近に背後を取るラストパスが出る。
 
 24分の1点目は左サイドを切り崩し、内藤洋平から池元へのスルーパス、これが千葉の焦りを誘ってPKを獲得した。56分の3点目は右サイドから押し込んで、星原健太から池元へのスルーパス。キープ、サポート、パス回し、ラストパスという素晴らしい流れがあった。
 試合後、FW渡大生に「効率がいいですねえ」と話しかけると、「いつもそうなんです。なぜだかわからないんですが、決まるんです」と笑っていた。
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