ルイス・ファン・ハール監督から戦力外とも言える通告を受け、非常に厳しい立場に置かれているマンチェスター・ユナイテッドの香川真司。移籍市場がクローズする８月末日を目前にして、今にわかにその去就が注目されている。
 
　残留するのか、移籍するのか。もちろん移籍するにも、受け入れ先があってのことであるが、現在、香川にはいくつかのクラブが獲得を狙っているとの噂がある。そこで、マンチェスター・U残留を含めた、現時点で可能性のある選択肢を４つに絞り、それぞれで香川にどのような未来が待っているのかを占ってみよう。
 
 
◆ケース１：マンチェスター・U残留
いつ訪れるとも知れぬ機会を待つ日々…
 
　プレミアリーグではスォンジーに敗れ、サンダーランドに引き分け。全くチームが機能しない状態で、期待を持って迎えられたルイス・ファン・ハール監督の株も下落しつつあるマンチェスター・Uだが、それでも指揮官は香川をピッチに送り出す気はないようだ。
 
　英国メディアのなかでは、まだ香川を評価している論調もいくつか存在しているが、最終テストと目されていたリーグカップ（MKドンズに０-４の敗北）でアクシデントによる途中交代と、大きな印象を残せずに終わってしまい、今後はアピールの機会を得ることも難しいと思われる。
 
　こうなっては、香川がこのまま残留しても、チームのなかでの序列が上昇することはまず期待できないだろう。怪我人が続出するか、はたまた結果の出せない現体制が早々に崩壊するか、というクラブにとっての大きな苦境でしか、チャンスを掴めない厳しい状況に身を置いている。
 
　守備的MFとしての特性を身につけない限り、現体制では生き残ることができないと指揮官から明言された以上、このクラブに居続けるということは香川にとって、いつ終わるとも分からぬ試練と苦難の日々が続いていくことを意味する。
 
 
◆ケース２：ボルシア・ドルトムント復帰
受け入れられることは間違いないだろうが
 
　今シーズン、ドルトムントは国内スーパーカップで王者バイエルンを内容の伴った勝利で制したが、一方でリーグでは“２番手争い”のライバルであるレバークーゼンに０-２で敗れて黒星発進を余儀なくされている。そんなドルトムントは、ご存じの通り、香川にとってキャリアの飛躍のきっかけとなったクラブであり、マンチェスター・Uで苦戦を強いられた昨シーズンから復帰の噂が挙がっている。
 
　戦力的には、昨シーズンまでの攻撃の大黒柱だったロベルト・レバンドフスキはいなくなったものの、CFにはイタリアの逸材チーロ・インモービレが加入し、移籍が確実視されていたマルコ・ロイスが残留し、ヘンリク・ムヒタリアンやピエール＝エメリク・オーバメヤンも力を発揮するなど、攻撃の陣容は整っていると言える。
 
　ユルゲン・クロップ監督が今なお香川の実力を高く買っているとはいえ、スタメンに簡単に割って入るのは難しいだろう。ハンス＝ヨアヒム・ヴァツケCEOが「補強は終わっている」と語ったように、体制がほぼ固まっているドルトムントだけに、当然ながら香川はマイナスからのスタートを余儀なくされることとなる。
 
　とはいえ、クロップ監督の下、ドルトムントで２シーズンを過ごしたこともあり、香川はこのクラブでのやり方を熟知している。ここで実績を残している以上、受け入れられるのも早いだろう。そして、そのハイテンポな攻撃には香川のプレースタイルがマッチするのは間違いない。現在、トップ下を務めるムヒタリアンと比較すると、細かい技術では香川、スピードでムヒタリアンと、それぞれ長所がある。
 
　リーグだけでなく、チャンピオンズ・リーグ、リーグカップ等、多くのコンペティションを戦うドルトムントでは、香川は余剰人員ではなく、使える駒のひとつとなれる。そのなかで存在と能力をアピールしてレギュラーに近づいていくことは、マンチェスター・Uでレギュラーとなるよりも、はるかに現実的で可能性の高いシナリオと言えよう。