本誌ワールドサッカーダイジェストと大人気サッカーアプリゲーム・ポケサカとのコラボで毎月お送りしている「レジェンドの言魂」では、サッカー史を彩った偉大なるスーパースターが、自身の栄光に満ちたキャリアを回想しながら、現在のサッカー界にも貴重なアドバイスと激励を送っている。
 
　さて今回、サッカーダイジェストWebに登場するのは、高いインテリジェンスと戦術眼、そして強靭でしなやかな体躯を活かした守備で、対峙する攻撃選手を封じ込め、「世界一のDF」ともいわれたリリアン・テュラムだ。
 
　フランスの初世界制覇に攻守で多大な貢献を果たした、カリブ産の偉人の軌跡を、ここで振り返ってみよう。
 
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　リュディ・リリアン・テュラム＝ユリアンがカリブ海のフランス海外県、グアドループのグランド・テール島で生まれたのは1972年１月１日、新年を迎えて数十秒後のことだった。
 
　サッカーを始めたのは、９歳でパリ南部のフォンテンブローに移住した後。初めて所属したのは、ポルトゲーズ・フォンテンブローという移民で構成されたチームで、そこから別のクラブを経て、88年にモナコからスカウトを受けて下部組織に入団する。
 
　91年５月24日のツーロン戦でトップチーム・デビューを果たし、同シーズンにはこのクラブ在籍時に唯一の獲得タイトルとなった国内カップの優勝を経験する。翌91-92シーズンの後半にはレギュラーに定着し、92-93シーズンにはリーグ戦37試合に出場。またブレーメンに敗れたものの、カップウィナーズ・カップの決勝にも進出した。
 
　当時の監督だったアーセン・ヴェンゲルの下で大きな成長を遂げ、93-94シーズンにはチャンピオンズ・リーグでの準決勝進出にも貢献したテュラムは96年夏、フランスのタレントの多くがそうしたように、イタリア・セリエAに挑戦する。
 
　加わったパルマは当時、ジャンルイジ・ブッフォン、ファビオ・カンナバーロ、ジャンフランコ・ゾーラ（同年11月にチェルシーへ移籍）、エルナン・クレスポら、攻守に世界中レベルのタレントを揃えていたが、テュラムはカルロ・アンチェロッティが率いるチームでも、早々にレギュラーポジションを獲得した。
 
　カルチョ１年目で公式戦37試合に出場し、ユベントスに次ぐ２位というクラブ史上最高順位を得るのに貢献し、98-99シーズンにはコッパ・イタリア、UEFAカップという国内・欧州のダブルタイトル制覇を成し遂げる。
 
　テュラムの価値は高まる一方だったが、パルマは財政難が表面化して徐々にチーム力が低下。主力選手が年々、チームを去るなかで、テュラムも2001年に新天地を求めることとなった。
 
　ブッフォンとともに加入したのは、イタリアの盟主であるユベントス。ここでカンナバーロとも再会したテュラムは、彼らとともに鉄壁の守備陣を形成し、01-02シーズンからセリエA連覇を達成。さらに１シーズンおいて再び２年連続でスクデットを獲得するなど、キャリアにおいても最も充実の時を過ごしていた。
 
　しかし、ここで思わぬ事態が彼を襲う。イタリア・サッカー界を震撼させた一大スキャンダルである。GMルチアーノ・モッジが審判の買収や脅迫を行なっていたことが発覚し、ユベントスは05-06シーズンからの２度のリーグ優勝を取り消されるとともに、06-07シーズンのセリエB降格処分を下された。
 
　これにより、ファビオ・カペッロ監督やカンナバーロらがレアル・マドリーへ、パトリック・ヴィエラやズラタン・イブラヒモビッチはインテルへ移籍し、一方でアレッサンドロ・デル・ピエロ、パベル・ネドベド、ブッフォンらは残留を決意した。
 
　34歳のテュラムはこの時、現役引退も考えていたが、熟考の結果、ジャンルカ・ザンブロッタとともにバルセロナのオファーを受諾。フランク・ライカール体制下のチームで２シーズンを過ごしたが、当時のバルサは過渡期にあり、この間の獲得タイトルは06年のスーペルコパひとつに止まった。