【番記者通信】アブダビの王族の本気|マンチェスター・C

カテゴリ:メガクラブ

スチュアート・ブレナン

2014年03月07日

1600億円の投入は、利益を追求したビジネスとしての投資。

シティを所有するアブダビの王族は、リーグカップ優勝を果たしたこのトップチームだけでなく、育成部門とマーケティング部門の強化も同様に図っている。オイルマネーを持て余した、決して道楽ではない。 (C) Getty Images

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 マンチェスター・シティを所有するのは、ご存じのようにアブダビの王族だ。シティを買収したのは道楽のひとつだと、世間一般にはそう思われている。つい先日、私はイスラエルのテレビ局からシティについてのインタビューを受けたが、取材スタッフもまた同様の見方をしていた。

 真実は違う。2008年の買収以来、オーナーを務めるシェイク・マンスール(フルネームはシェイク・マンスール・ビン・サイード・アル・ナヒヤーン)は総額10億ポンド(約1600億円)を超える巨費をクラブに投じてきた。これが利益を追求したビジネスとしての投資だということは、アブダビの国情を見れば分かるだろう。

 産油国として栄えてきたアブダビだが、石油資源は近い将来、尽きると言われている。石油立国から観光立国への転換を彼らは模索しており、世界的な人気を誇るプレミアリーグのクラブを所有することは、その一環として位置づけているのだ。

 シティにとっても、買収は渡りに船だった。中位から下位をさまよう弱小チームに成り下がり、多額の負債も抱えていた。それがアブダビの王族の下、世界屈指の金満クラブへと一夜にして生まれ変わり、大型補強で競争力を身に付け、いまやレアル・マドリーやバイエルン、バルセロナといった欧州の超名門に肩を並べうるまでの存在に成り上がったのだ。

 声を大にして言いたいのは、アブダビの王族は決して短絡的ではなく、長期的視野でクラブの強化を考えているという事実だ。セルヒオ・アグエロやダビド・シルバといったワールドクラスを獲得した大型補強にばかり目が行きがちだが、ユースアカデミーへの投資を惜しまず、クラブの独立採算を見据えてマーケティング部門の強化を図っている。実際、これまでの投資の約半分は、この両部門に向けられた。

 アブダビの王族の本気度は、現在進行中のトレーニング施設の建設に明らかだ。本拠地エティハド・スタジアムから道を挟んだ反対側の敷地に、巨大な複合施設が今夏に完成予定だ。欧州のサッカー界のみならず、米国のプロスポーツ界を含めても指折りの充実した施設、育成組織を築き上げるという、壮大なプロジェクトである。

 ユース部門の重要人物として、そのプロジェクトの中心的役割を担っているのが、昨夏からU‐21チームを指揮するパトリック・ヴィエラだ。元フランス代表でクラブOBのヴィエラが率いるU‐21は、リーグ戦で上位をキープし(2試合未消化ならが3位)、リーグカップはベスト4。UEFAユースリーグではベスト16に進出した。U-18チームも順調で、U-18プレミアリーグ北部グループで11連勝を記録すれば、U-13とU-14は国内チャンピオンだ。

 アブダビの王族のクラブ運営は、しっかりと地に足がついているのだ。

【記者】
Stuart BRENNAN|Manchester Evening News
スチュアート・ブレナン/マンチェスター・イブニング・ニュース
マンチェスターの地元紙『マンチェスター・イブニング・ニュース』のフットボール記者で、2009年から番記者としてシティに密着。それまではユナイテッドを担当し、両クラブの事情に精通する。

【翻訳】
松澤浩三
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