王者の底力――明らかに名古屋優勢の時間帯、川崎はなぜ3点目を奪えたのか?

カテゴリ:Jリーグ

江藤高志

2018年09月23日

勝負を分けた時間帯。ホームチームの失点に等々力は明らかに気落ちしていたが…

大島は名古屋の攻勢を受けた時間帯でも冷静に巻き返しの一手をイメージしていた。写真:徳原隆元

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[J1リーグ27節]川崎3-1名古屋/9月22日/等々力
 
 川崎が2点をリードして迎えた後半。立ち上がりの53分に小林悠が決定的なチャンスをクロスバーに当てている。前に出てきた名古屋に対し、3点目を奪えていれば試合は終わるという展開だった。ところが、この決定的な場面で追加点を奪えず。

 
 ざわつくスタジアムが悪い雰囲気になっていたわけではなかったが、気持ちのどこかに引きずるような感情がまだ残っていた59分に失点を喫した。名古屋がパワーをかけていた時間帯で、名古屋が点を奪いに来ていた時間帯の失点に等々力は明らかに気落ちした。
 
 悪い空気は連鎖するもので、失点の直後には大島僚太が珍しくパスミスし、名古屋が高い位置で攻撃に転じると、あわや同点ゴールかという形を作られてしまった。
 
 マージンが1点に減り川崎側の空気は重くなる一方、名古屋は完全に息を吹き返していた。このまま同点ゴールを決め、一気に試合をひっくり返そう、という意思を出していた。
 
 そんな展開のなか、ピッチ上の選手たちは冷静だった。
 
 大島はクリアするところとつなぐところの判断をより研ぎ澄ませていたという。
 
「蹴っちゃうと押し込まれる時間も続いてしまいますし、押し上げることもなかなかできなかったので、そこでつなぐのかボールを切るのか、そういうところの判断にしかならない」のだと振り返る。
 
「集中してないわけではない」と話す失点ではあったが「結果的に失点するとそういうふうに目を向けてやるしかないかなと思ってました」と述べている。
 
 一方、車屋紳太郎は「嫌な雰囲気になりましたが、自分はもうひとつエンジンを上げようかなと思いましたし、より攻撃的にやろうかなと思った」と言う。
 
 押せ押せの相手に対し、守りに入るのではなく攻撃的なマインドをさらに色濃く出す。そうやって劣勢を跳ね返そうとしていたのだという。なぜならば「攻撃的に行ったら自分たちは勝てる確率は上がってくる」(車屋)という考えがあったから。
 
 闇雲にクリアしなかった大島や、さらに攻撃的に出ようと心がけていた車屋。そうした相手を上回ろうとする意思の力が、ゴールを畳み掛けようとする名古屋の攻撃を上回った。63分の3点目は、川崎の強い思いが手繰り寄せたゴールだったとも思える。
 
 もちろん試合展開は常に両チームの間を行き来する。90分間相手を押し込み続けられる試合はないのだが、劣勢の時間帯だからこそ強気に出るという姿勢が、2失点目を防ぎ、3得点目を呼び込んだ。川崎の“強さ”を示せた時間帯だった。
 
取材・文●江藤高志(フリーライター)

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