[J１リーグ24節]C大阪０-１広島／８月25日／ヤンマースタジアム長居
 
　パトリックが先頭に立って敵陣に突っ込んでいく特攻隊長だとしたら、この男は物陰から一瞬の隙を突いて敵を撃ち取る“必殺仕事人”と言えるかもしれない。稲垣祥がＣ大阪戦で決めたゴールは、まさにスーパーだった。
 
　稲垣が仕事を果たしたのは19分だった。クロスのクリアボールに合わせて思い切り左足を一閃。地を這うようなキャノンショットで、見事にC大阪ゴールを撃ち抜いてみせた。
 
「最近はああいうボールが何本もこぼれてきていて、『狙っていけ』と監督にも言われていました。今日はああいう形で決められて良かったです。ただ、もう１本くらい決められれば、なお良かったですね」
 
　城福浩監督のアドバイスどおり、果敢な姿勢が奏功した。さらにこの日の稲垣は、先制点以外でも度々ミドルシュートを放ち、C大阪ゴールを脅かした。27分の右足の強烈なシュートなど、その積極性は目を見張るものがあった。
 
　素晴らしかったのは、ゴールだけではない。中盤の広範囲を走り回ってピンチの芽を摘む、潰し役としても大いに貢献。清武弘嗣のテクニカルなドリブルやソウザのパワフルな突破を食い止めたその働きは、実に頼もしかった。
 
　指揮官からの信頼も厚い。昨季に甲府から加入した稲垣は今季、ルーキーイヤーに指導を受けた城福監督の下、リーグ戦23試合・３得点（24節終了時点）。加入１年目だった昨季の14試合・２得点と比べて出番を大幅に増やし、キャプテン青山敏弘のボランチの相棒として、広島の躍進に欠かせない中盤の要となっている。
 

　稲垣の活躍の要因となっているのは、自信だ。
 
「僕自身は昨季から特になにも変わっていない。特別巧くなったわけではないし、強くなったわけでも、高くなったわけでも、速くなったわけでもない。自分が試合に出て結果がついてくれば自信になるし、そういう良いサイクルに乗れているから、また良いプレーが出てくる」
 
　自身のポテンシャルを引き出す「好調のサイクル」に乗った稲垣は、今後も大仕事を果たしてくれそうだ。この“必殺仕事人”が、広島のリーグ優勝のキーマンになるかもしれない。
 
取材・文●多田哲平（サッカーダイジェストWEB編集部）

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