１か月間にわたって激戦を繰り広げたロシア・ワールドカップは、クロアチアとの決勝戦で４-２と完勝したフランスの20年ぶり２度目の戴冠で幕を閉じた。

　ポール・ポグバやアントワーヌ・グリエーズマン、キリアン・エムバペといった精鋭軍団において、まさしく縁の下の力持ちとなって活躍したのはボランチのエヌゴロ・カンテだ。168センチの小兵戦士は、主にアンカーとして全７試合に先発出場（６試合でフル出場）し、無尽蔵のスタミナを武器に攻守の舵取り役を巧みにこなした。

　そんなカンテの人柄が表われたのが、決勝戦後のひとコマだ。英紙『Dailymail』が、チームメイトであるステベン・エヌゾンジとのエピソードを交えて紹介している。
 

　優勝決定後、雨が降るルジニキ・スタジアムのピッチ上では、フランスの選手たちが、我先にワールドカップトロフィーを掲げ、思い思いのポーズを取るなか、とてもシャイな性格の持ち主であるカンテはトロフィーを手にできずにいた。

　そんな27歳のダイナモの様子を見て行動に出たのが、エヌゾンジだ。カンテより２つ年上のエヌゾンジは、フロリアン・トバンに声を掛けてトロフィーを受け取ると、それを優しく手渡し、「かっこよく決めろ」とばかりにポーズを取るように促したのだ。

　なんともほっこりする話だが、カンテにまつわる話はこれだけじゃない。

　試合後、全てのセレモニーが終わり、宿舎へと向かうフランス代表の移動バス内では、とあるチャントが歌われた。トマ・ルマールなど複数選手のインスタグラムの動画で明らかになったその応援歌は、カンテの今大会の活躍ぶりを称えつつも、素顔（？）を明らかにするものだった。

「エーヌゴロ・カンテー！ パララララ！ エーヌゴロ・カンテー！ パララララ！ こいつはチビ、こいつは素敵、こいつはリオネル・メッシを止める！ だけど、みんなが知ってる、こいつはペテン師なのさ」

　チームメイト全員による大合唱を聞き、思わず恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべたカンテ。ペテン師の意味は定かではないが、その愛されっぷりは、彼が、フランスの世界制覇に欠かせない存在であったことを知るに十分なものだった。

【写真】カンテもトロフィー片手にニッコリ！ 世界王者フランスの栄光のメンバーたち