電光石火の一撃が決まったのは、１点リードで迎えた31分だった。
 
　ロシア・ワールドカップの準々決勝、ブラジルvsベルギー戦は立ち上がりから両チームとも激しいプレッシャーの応酬。だが徐々に小気味良いパスワークとカウンターでペースを握ったのは“赤い悪魔”だった。13分にリスタートから敵のオウンゴールを誘って先制すると、その後もセレソンに反撃の糸口を与えず、攻勢を続ける。そして迎えた31分、世界がひとりの男のスーパーゴールの前にひれ伏すのだ。
 
　ロメル・ルカクのパスを受けたケビン・デ・ブルイネが、ゴールまで20メートルの位置から右足を一閃！　地を這うようなレーザーショットは相手GKアリソンの手をかすめ、ファーサイドのゴールネットに突き刺さった。豪快なゴラッソで、ベルギーが点差を２点に広げたのである。
 
　試合は後半にブラジルの猛攻に遭うも、反撃を１点に食い止めたベルギーが２－１で逃げ切り。32年ぶりのベスト４進出を果たし、準決勝で隣国フランスと雌雄を決することとなった。

 

　世界中の称賛を浴びたのが、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたデ・ブルイネとそのパフォーマンスだ。英公共放送『BBC』は「とんでもなくクオリティーの高いショットだ」とゴールを評したうえで、「デ・ブルイネは日本戦のラストプレーで圧巻のドリブルから決勝点を導いた。ただ今日のゲームパフォーマンスはあの日本戦を超えるほどの衝撃だった」と絶賛。さらにベルギー公共放送『RTL』は「英雄的なゴールだ。デ・ブルイネはブラジルの名だたる名手たちを向こうに回しても、ピッチで一番輝いていた」と称えている。
 
　さらに米ネットワーク『CBS Sport』もこの大柄な攻撃的ＭＦを持ち上げた。「あのゴールがブラジルと会場を埋め尽くしたブラジル人サポーターに与えたショックは計り知れない。それほど阻止不可能な完璧なショットだったからだ」と報じている。
 
　試合後の記者会見に登場したデ・ブルイネも、興奮を隠せない様子だった。ベルギー代表が世界のトップ３（FIFAランキング）から勝利するのは、およそ16年ぶりのことだ。
 
「僕たちはついに真のトップレベルから勝利することができた。これは本当に大きな自信に繋がる。今日のブラジル戦のような試合をするために、そこで最高の勝利の瞬間を味わうために、僕たちはフットボールをプレーしているんだ」