『睡眠を取るか、ワールドカップを取るか』

　フットボールホリックにとって、苦渋の決断が日々強いられるワールドカップ月間が始まったが、奇しくもその祭典と開幕週を被せてきた今季のFリーグ。しかしその狙いが全く読めなかった。その本意を知りたいばかりに、モスクワ行きを延ばしてまで向かったFリーグ開幕戦。間違いなくモノ好きな部類なのだと自らを認識した。

　会場の駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場、ファンの入りは６割といったところだろうか。特別な臨場感は全く感じなかった。

「Fリーグ、おもろいからやりましょうよ」と、近年フットサルに魅せられた勢いで編集担当を口説き、首を縦に振らせた自らの立場を少しづつ危惧し始めていた。そんな八方塞がりな筆者と、たまたま隣り合わせたお人好しなFリーグ広報スタッフとの雑談で心境が一変する。

筆者 「今季のFリーグの見どころなんかを説いてくださる方っていないですかねぇ？」
Ｆ広報 「なるほど。COOはいかがでしょうか？」
筆者 「COOって？ えっ？ 小倉純二FリーグCOOですか？！」
Ｆ広報 「はい、駄目でしょうか？」
筆者 「駄目な訳がないでしょうよ。是非お願いさせていただきたくー!!（汗）」

　言わずもがな、日本サッカー協会第12代会長であり、FIFAやAFCの理事を歴任、また現在はJFA最高顧問でもおられる日本サッカー界の重鎮だ。

「お仕事中にスミマセン。失礼しますね」と言いながらインタビュー場所となったメディア控室兼会見場に現われた小倉純二FリーグCOO、広報に依頼してから45分の早業だった。これぞ、Fリーグの“本気の姿勢”の表われなのだろうか。

――ご多忙な中、急なオファーにも拘らず、お引き受けいただき感謝しております。

「いえいえ、大丈夫ですよ」

――私はサッカーファンにもフットサルの面白さをもっと知ってほしいと思っているんです。

「ジーコが最初に日本へ来た時から、ブラジルではフットサルを非常に重要視しているんだと、ゴール前でなかなか点が取れないという問題を解決するには、フットサルをやらないといけないんだと。ブラジルでは13～14歳までフットサルしかさせなくて、その歳になってから11人制（サッカー）を選択するのか５人制（フットサル）を選択するのか決めさせるんだと彼はしょっちゅう言っていたんですよ。だからそういう意味でも、日本サッカー協会の中で、北澤豪委員長を筆頭とするフットサル委員会に、技術委員会副委員長の山本昌邦らにメンバーへ入ってもらって、サッカーとフットサルをどう融合させていく必要があるのかをひとつのテーマとして検討しようということで、フットサル委員会の構成を変更してもらったり。そういった成果がFリーグにも出てくると良いなと思っているんです」

――なるほど。では今季、Fリーグの見所はどのあたりなのでしょうか？

「ひとつは、成熟したベテランチームと、活気溢れる若いチームが割とハッキリしてきていることは楽しみ。もうひとつは、経験と技術がなければ熟していけない競技の中でも、若者が伸びてこないといけないだろうということで、今季からFリーグ選抜（セレクションを経て選ばれた23歳以下の15名からなる選抜チーム）が出来たこと。そういった試みの成果が出てくれば良いなと思っているんです」