ワールドカップ（W杯）開幕前日の解任劇から一夜明けた６月14日、レアル・マドリーはスペイン代表指揮官の座を追われたばかりのジュレン・ロペテギ監督と正式に契約を結んだ。

　その入団会見においてマドリーのフロレンティーノ・ペレス会長は、怒りを露にしてロペテギの電撃解任に踏み切ったスペイン・サッカー連盟に対し、次のように指摘した。

「代表監督が主要大会の前にクラブへの転身を決めた例は、過去にもある。ただし、今回のようにその監督が“裏切り者”として扱われたのは、サッカーの歴史で初めてのことだ」

　この発言を受け、スペイン紙『Marca』は同日、ペレス会長の主張に当てはまるケースをいくつか紹介している。
 

◆アントニオ・コンテ（2016年／イタリア代表→チェルシー）
もっとも直近のケース。イタリアをEURO2016でベスト８に導いたコンテ監督だが、大会前の４月にチェルシーの指揮官に就任することが発表されていた。

◆ルイス・ファン・ハール（2014年／オランダ代表→マンチェスター・ユナイテッド）
ブラジルW杯前の５月にユナイテッド行きを発表。大会では初戦で王者スペインに快勝すると、そのまま勢いに乗ってベスト４まで駒を進めたものの、準決勝でPK戦の末にアルゼンチンに屈している。

◆ルイス・アラゴネス（2008年／スペイン代表→フェネルバフチェ）
EURO2008の大会中、ロシアとの準決勝を前にフェネルバフチェとの仮契約が発表された。スペインを二度目の優勝に導き、大会後に正式契約を結んだ。

◆ルイス・フェリペ・スコラーリ（2008年／ポルトガル代表→チェルシー）
EURO2008のチェコとのグループステージ第２戦が終わった直後にチェルシー行きが発表された。開幕２連勝を飾っていたポルトガルだが、発表直後のスイス戦で敗れると、準々決勝でもドイツに２-３で屈し、ベスト８敗退に終わっている。

◆フース・ヒディンク（2008‐2009シーズン／ロシア代表・チェルシー）
こちらはやや特殊なケース。EURO2008でロシア代表をベスト４に導いたヒディンク監督は、前述のスコラーリ監督が解任されたのを受け、2008‐2009シーズンの途中にチェルシーの指揮官に就任した。ロシア代表との兼任だったが、チェルシーをリーグ３位やFAカップ優勝に導いている。

◆ラディスラオ・クバラ（1980年／スペイン代表→バルセロナ）
EURO1980開幕の３日前に退任発表。11年指揮したスペイン代表を離れ、バルセロナに向かうことになった。大会ではそのまま指揮を執ったが、スペインは１勝も挙げていない。

◆ミリャン・ミリャニッチ（1974年／ユーゴスラビア代表→レアル・マドリー）
1974年W杯で１次リーグを突破したが、２次リーグで敗退。だが、好印象を残したミリャニッチ監督は大会後にマドリーの指揮官となり、１年目からリーグ優勝を果たした。


　状況や背景はそれぞれ異なる。そのため、過去の例が今回のケースに似ているとは一概には言えないだろう。

　スペイン代表はフェルナンド・イエロ新監督の下、“ロペテギ・ショック”を払拭し、ロシアW杯で躍進できるのか。そしてロペテギは、注目を集めること必至の１年目から、マドリーで結果を残すことができるのか。