５月24日、アンドレス・イニエスタは東京都内で行なわれた記者会見に臨み、ヴィッセル神戸への加入を正式に発表した。
 
「提示されたプロジェクトが非常に興味深いものだったこと。そして、人として、プレーヤーとして、私を信頼してくれたこと」を神戸移籍の理由として挙げたイニエスタは、「早く日本に馴れて活躍したい」と抱負を語っている。
 
　日本行きの噂が浮上した当初は、全く現実味のなさそうな話だったが、神戸側の尽力もあって、Jリーグ史に残る超大物の移籍劇が実現した。神戸に限らず、日本の多くのサッカーファンがスーパースターの到来に狂喜乱舞し、彼が参戦する夏以降は、リーグが大いに活気付きそうだ。

 
　そんな一大フィーバーを巻き起こしているイニエスタだが、果たして彼の何が、日本人を喜ばせ、高揚させているのだろうか。
 
　我々が彼に期待を抱く理由のひとつは、まず何といっても、その輝かしい実績がある。2002年にバルセロナでトップチーム・デビューを飾って以来、この身長171センチの小柄なMFが得てきたクラブでのタイトルは以下の通りである。
 
リーガ・エスパニョーラ：９回
コパ・デル・レイ：６回
スーペル・コパ：９回
チャンピオンズ・リーグ（CL）：４回
クラブワールドカップ：３回
UEFAスーパーカップ：３回
 
　クラブレベルのコンペティションでは世界最高峰にあるCLでの優勝４回は、リオネル・メッシ、シャビ、レアル・マドリーのクリスチアーノ・ロナウド（今シーズンで単独トップに躍り出る可能性も）、そしてアヤックス、マドリー、ミランを渡り歩いたクラレンス・セードルフと並んでトップである。
 
※チャンピオンズ・カップ時代を含むと、1950～60年代にマドリーで活躍したフランシスコ・ヘントの６回が最多で、同チームのアルフレド・ディ・ステファノ、ミランのパオロ・マルディーニらが５回で続く。
 
　また、世界最高峰リーグにも挙げられるリーガ・エスパニョーラでの優勝９回は、バルサではメッシと並んで史上最多であり、リーガ全体でもヘント（12回）、60～80年代にマドリーに在籍したホセ・マルティネス・サンチェス（10回）に次ぐ偉大な数字である。
 
　これに加えて、2006年からメンバーに名を連ねるようになったスペイン代表では、2008年のEUROで中盤のカルテット「クアトロ・フゴーネス（４人の創造者）」のひとりとして母国に1964年以来となるタイトルをもたらし、さらに４年後にも中盤の核として大活躍し、同大会史上初の連覇に大貢献し、自身は大会最優秀選手に選出された。
 
　また、2010年の南アフリカ・ワールドカップでは、グループステージ初戦を落とすなど苦しい戦いの連続だったスペインのなかで攻守に奮闘し、しぶとく勝ち上がった決勝では、延長後半の116分に自身の右足での一撃でオランダを下し、８番目の世界王者の称号を母国にもたらしている。
 
　得点数は図抜けて高いとは言えないが（その代わり記憶に残る印象的なものが多い）、未来永劫、その映像とともに語り継がれるであろうW杯決勝でウイニングゴールを決めるあたりが、彼の持って生まれたスター性と言えるのかもしれない。
 
　クラブ、代表の両方で大陸一＆世界一を、それも主力として成し遂げたのは、J歴代外国人選手のなかでは、イニエスタただひとりである。