[J１リーグ６節]柏 ０-１ 広島／４月８日／三協F柏
 
　日本代表を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、一貫して「デュエル（決闘）」を声高に謳い、対人戦での強さを要求してきたが、現在のJリーグでそれを体現しているチームと言えば、首位の広島だろう。
 
　実際にそう思えるほど、柏戦での広島の選手たちは球際に強かった。クリスティアーノに対してはCBの野上結貴がエアバトルでことごとく競り勝ち、江坂任や瀬川祐輔が左サイドから攻め込めば右サイドバックの和田拓也が１対１で封殺する。
 
　中盤では稲垣祥を筆頭に、相手に対して激しく身体をぶつけ、ルーズボールにも素早く反応する。そして、最前線では「アバウトなボールでも身体を張って、最低限ファウルをもらう。そういうベースはパトリックとふたりでできている」と工藤壮人が言うように、２トップのポストプレーが効いていた。
 
　そうして11人全員がデュエルで戦ったからこそ、セカンドボールはほとんど広島にこぼれた。その積み重ねで相手を押し込み、17分には右サイドからのクロスが流れたボールを、佐々木翔が冷静なシュートで決勝弾を叩き込んだ。城福浩監督は「もっと早めに１点目が入ってもおかしくなかった」と胸を張った。
 
　しかし、それは前半だけだった。
 
　後半のシュート数は柏の５本に対して広島は１本で、ボールを保持したホームチームが主導権を握って攻めた。クリスティアーノの75分のPK、後半アディショナルタイムのバー直撃のヘディングシュートが決まっていれば、敗れていてもおかしくない試合だった。実際、指揮官も「守り切れたわけではない」と認めている。
 
　もちろん、90分通して前半のようにデュエルで勝てるのが理想だ。しかし、「１-０で勝っていて、後ろに重心がかかるのは仕方ない。あれだけ前半に飛ばすと、後半は息が上がった」（城福監督）という言葉からも分かるように、それは不可能に近い。
 
　だからこそ、城福監督は“コントロール”について反省する。
「守備がどうこうではなく、（攻め込まれたのは）相手のボールの時間が多かったという反省。（ボールを保持して）自分たちの時間を作りながら心拍数を落とすゲームコントロールをしなければいけなかった。そういう試合巧者をもっと目指したい」
 
　前半の広島は、ハリルホジッチ監督が言うデュエルの重要性を感じさせた戦いぶりだった。しかし城福監督の反省は、ある意味でここ最近の日本代表の苦しい試合内容と重なる。日本代表を去った指揮官はJリーグに大事なものを残していったが、決してそれに偏り過ぎてはいけないことを再認識させられたゲームだった。
 
取材・文●志水麗鑑（サッカーダイジェスト編集部）