[J１リーグ２節]川崎１-１湘南／３月２日／等々力陸上競技場
 
　見る者の興味をそそるルーキーが25年目のJリーグに登場した。湘南ベルマーレの俊英FW松田天馬だ。

 
　開幕戦に続き、２試合連続先発出場を飾った松田が記念すべきプロ初ゴールをマークしたのは、チームが１点のビハインドを背負い、劣勢に立たされていた66分だ。秋野央樹が蹴り込んだ左CKをアンドレ・バイアが頭で落としたところに、「うまくこぼれそうなところに入ろうと思った」と、ゴール前にポジションを取り、右足でシュートを突き刺した。
 
　開幕の長崎戦のアシストに続き、今度は値千金の同点弾。しかも、昨シーズンのJ１王者川崎フロンターレとのダービーマッチだけに得点の価値は高い。松田本人も「今日はチームでやるべきことをやろうと思っていた。それがゴールにつながって良かった」とあどけない表情を見せた。
 
　鹿屋体育大４年だった昨シーズンから特別指定選手として湘南のトップチームに帯同し、J２で３試合に出場。早々にプロのステージを経験していた松田はその後、昨年８月に台湾で行なわれたユニバーシアードの日本代表に選出され、３大会ぶりの優勝にも貢献した。大学サッカー界で名を馳せた湘南のルーキーは、J１の舞台でも早々にその名を轟かせている。
 

　そんな22歳の俊英だが、課題がないわけではない。
 
　３-４-２-１の２シャドーの一角に入ったこの日は、「最初は雰囲気に飲まれて積極的にいけなかった」と試合後に当人が明かしたように相手にペースを握られた前半は慎重なプレーが悪目立ちし、存在感が希薄になる時間帯もあった。
 
　それでも、「曹監督から『ドンドン、仕掛けて良いよ』と言われ、周りが見えるようになった」という164センチ・62キロの小柄なアタッカーは、185センチのエドゥアルド・ネットや183センチの谷口彰悟など体格差のある相手にも勇猛果敢に仕掛けるようになった。
 
　試合後、的確なアドバイスを送り、強者を前に戸惑う松田を変貌させた曹貴裁監督は、「彼の一番良いところは自分の力で、ゲームの中でパフォーマンスを変えていけるところ」と目を細めつつも、「22歳というのはどのチームでも主力になっていかなきゃいけない歳。そういうところで言えば、まだまだ物足りない」と発破をかけた。
 
　そんな指揮官の想いを松田も痛感しているのか、「もっとドリブルで仕掛けたり、チームを落ち着かせられたら、もっともっと上に行ける。もっと、声も出していかないといけない。あのポジションでやっている限り、結果を出していかないとダメ」と、危機感と強い覚悟をにじませている。
 
　とはいえ、そのプロキャリアはまだまだ始まったばかりだ。「湘南のサッカーは楽しいです」と充実感に満ち溢れ、初々しい表情を浮かべる松田が、この１年でどこまで成長するのか。その興味は尽きない。

【川崎 1-1 湘南 PHOTO】小林悠が華麗なヘッドを決めるも、松田天馬の同点弾で神奈川ダービーはドロー！
 
取材・文●羽澄凜太郎（サッカーダイジェストWeb編集部）