いよいよ、来月、チャンピオンズ・リーグ（CL）の熾烈な戦いが再び幕を開ける。現地２月13日に決勝トーナメント１回戦第１レグがスタートする。
 
　ファンにとってはたまらない魅力的なカードが組まれたなかで、最も注目したいのが、バルセロナとチェルシーの対決だ。
 
　ヨーロッパ最強を巡る戦いにおいて、幾多の激闘を重ねてきた両者のマッチアップはこれが初めてではない。実は過去12試合を戦って、４勝５分け３敗とチェルシーがわずかに勝ち越している。ここでは、その名勝負を振り返っていきたい。
 
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　欧州舞台で初めて激突したのは、1999-00シーズンのCL準々決勝。そこから始まった両者の対戦は、いずれも激闘に次ぐ激闘。その中でも珠玉の戦いとなったのが、2008-09シーズンの対戦である。
 
　2005-06シーズンにも決勝トーナメント１回戦での対戦では、バルサが２戦合計スコアを３-２で勝ち抜け。翌06-07シーズンにはグループステージで相対したが、その時には１勝１分けでチェルシーが勝ち越しに成功するなど、両者は互いに引けを取らない抗戦を繰り広げていた。そして、サッカー史に残る名勝負となったのが、08-09シーズンの準決勝だ。
 
　この当時、屈辱的な２シーズン連続の無冠という悲惨な状況に陥っていたバルサは、新監督として、まだ38歳の青年監督だったジョゼップ・グアルディオラを招聘。クラブは奔放な行動が目立ち始めていた功労者であるロナウジーニョやデコを切り捨てる抜本的な改革に乗り出していた。
 
　現役時代にバルサでヨハン・クライフにサッカー観を叩き込まれ、『美しく勝つ』をモットーに“ペップ”は、瞬く間にチームを掌握。リオネル・メッシ、アンドレアス・イニエスタ、シャビ、セルジオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケといったクラブの生え抜きメンバーを中心とした伝統の攻撃的サッカーを蘇らせた。
 
　そんな智将の手腕に導かれたバルサは、CLにおいても並み居る強豪を次々と撃破し、準決勝まで勝ち進む。ここで立ちはだかったのが、他でもない“天敵”チェルシーだった。
 
　ブラジル人指揮官ルイス・フェリペ・スコラーリ政権が立ち行かず、２月にオランダ人指揮官フース・ヒディングを招聘してチームのムードを好転させていたチェルシーは、主砲のディディエ・ドログバが復調し、同時にモウリーニョ政権時代のソリッドな戦術も復活させていたのだ。
 
　スコアレスで迎えた第２レグ、舞台はスタンフォード・ブリッジ。９分にマイケル・エッシェンがボレーを決め、完全に守勢に回ったチェルシーの守備網を前にバルサは追い込まれていた。ボールポゼッション率で圧倒するも、なかなか決定機を生み出せずいると、66分にニコラ・アネルカに対する不用意なタックルでエリック・アビダルが退場処分を受け、数的不利になる。
 
　時間の経過とともにチェルシーの決勝進出が色濃くなっていくなかで、バルサは己のスタイルを貫き、攻撃的なサッカーを徹底した。そして、その諦めない執念が結実する瞬間が訪れる。
 
　後半ロスタイムの93分、相手ゴール前でボールを拾ったイニエスタが、渾身のミドルシュートを突き刺したのだ。
 
　ゴールが決まった瞬間、勝ち抜けを確信したイニエスタはユニホームを抜き捨て、感情を爆発させる。さらにバルサ・ベンチから普段はクールなグアルディオラもが飛び出し、喜びを分かち合う姿は、何よりも激戦を物語る光景と言えた。
 
　試合は１-１で終了し、アウェーゴール数でバルサはチェルシーを退け、決勝へ進出。そして、ローマで行なわれたファイナルではマンチェスター・ユナイテッドを２-０で下し、３大会ぶりに欧州の頂点に立った。そこから“ペップ・バルサ”の歴史が紡がれることになるのであった。