[高校サッカー選手権１回戦]秋田商 ０-１ 神村学園／12月31日／NACK
 
　いわば格の違いを見せた瞬間だった。
 
　０-０で迎えた前半38分、クリアミスをカットしたMF田畑拓武からパスが渡る。「ゴールは見ていなかった」という神村学園のエース髙橋大悟が、振り向き様に得意の左足を振り抜く。ワンバウンドしたボールが、鮮やかにゴール右隅に突き刺さった――。
 
　清水エスパルス入りが内定している髙橋は、前半から厳しいマークに苦しんでいた。「もっと触りたかった」と本人が吐露したように、同じ14番をつける秋田商のMF柏谷一輝にマンマークされ、思ったようにボールに絡めない。
 
　大黒柱を封じられたチームは球離れが遅くなり、ドリブルを仕掛けてはボールを奪われてカウンターを食らう悪循環。自慢のパスワークが機能せず、フラストレーションが溜まる展開だった。
 
　そんな中、ようやく巡ってきたチャンスが38分のこの場面だった。それを一撃で仕留めるあたりは、さすがは千両役者。神村学園の有村圭一郎監督が、「髙橋しか決められない」と舌を巻く圧巻のゴールだった。
 
　敵将・小林克監督も「うまく抑えられていたんだが……。数少ないチャンスをモノにするところは、やはりプロへ行くレベルの選手」と脱帽するしかなかった。
 
　後半は運動量で勝る秋田商に攻め込まれる場面が増えたものの、この１点を守り切り、神村学園が２回戦へと駒を進めた。しかし殊勲のキャプテンは、「神村らしいサッカー、お客さんに楽しんでもらえるサッカーがまったくできなかった」と反省しきりだった。
 
「今日のパフォーマンスは100点満点で何点か？」
　そう尋ねると、驚きの答が返ってきた。
「２点ですね。２点はゴールの分。それだけです」
 
　１月２日に行なわれる２回戦の相手は、上位進出が期待される埼玉の昌平。100点とはいかないまでも、エースの活躍なしにこの強豪を撃破することはできないだろう。

「昌平は同じような（ポゼッション）スタイル。今度はお客さんに楽しんでもらえるような試合にしたい」
　そう意気込みを語った髙橋は、囲み取材が終わると、もう一度「（今日は）２点です」と言い残してチームバスに乗り込んでいった。
 
取材・文●江國 森（ワールドサッカーダイジェスト編集部）