スタジアムを飲み込んだ“北朝鮮劇場”。なでしこジャパンの敗退は必然だった

カテゴリ:国際大会

多田哲平(サッカーダイジェスト)

2017年12月16日

サポーターの大声援も印象に強く残ったが、選手たちの気迫も違っていた。

サポーターの大声援に支えられた北朝鮮は見事に大会3連覇を成し遂げた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[E-1選手権女子]日本 0-2 北朝鮮/12月15日/フクアリ
 
 アウェーだと勘違いしてもおかしくないような雰囲気だった。
 
 日本対北朝鮮は、いずれもここまで中国と韓国を下して2連勝。3日目の直接対決が事実上の決勝戦となった。フクダ電子アリーナで行なわれたこの試合、アウェーのゴール裏の一角にはぎっしりと日本在住の北朝鮮サポーターが陣取っていた。ゴール裏に限れば、日本のサポーターとそう大きくは変わらない人数だっただろう。
 
 試合中は、両手に持ったスティックバルーンを叩きながら全員で応援歌を口にする。チャンスとなれば、より一層大きな声援で母国の選手たちを後押し。ゴール裏の最前列では何本もの国旗が合唱に合わせて上下に揺れ、さらに大きな迫力を生み出していた。
 
 65分、北朝鮮に待望の先制点が入ると、選手、スタッフ、サポーター全体が歓喜に沸く。大勢の拍手とともに大きな歓声が上がった。その一体感は一気にスタジアムを飲み込んだ。
 
 その後、先制点献上で気落ちして攻守に精彩を欠いた日本を尻目に、運動量の衰えない北朝鮮は82分には優勝を決定づける追加点を奪取。結局そのまま2-0で日本を下し、2013年から3大会連続での優勝を決めた。
 
 サポーターの大声援も印象に強く残ったのだが、それにしても日本戦で見せた北朝鮮の選手たちのプレーぶりは圧巻だった。90分間衰えない上下動と捨て身のタックルは、なでしこの選手たちのそれとは気迫が違った。
 
 なでしこジャパンの10番を背負う阪口夢穂が「北朝鮮のプレッシャーが速い分、少ないチャンスで得点をとらないといけなかった」と語れば、21歳の新鋭FW籾木は「なんていうんだろうな……。サッカーの巧さとかそういうものじゃなくて、ボールを取りに来る、そういうシンプルなことを全力でやってくる。それを90分できるのが北朝鮮の素晴らしさ。そこに対して自分たちは劣ってしまった」と反省の弁を述べる。
 
 今年の3月までドイツのバイエルンに所属し、多くの国際大会を経験した岩渕真奈でさえ、「後半になっても運動量は落ちなかった。強かった」と感服した。
 
 北朝鮮は強かった――。それもそのはずだ。日本の選手が恐れるほど貪欲に、北朝鮮の選手たちがボールを奪う姿勢を持ち続けられたのには理由がある。優勝した北朝鮮の選手には、破格の高待遇が待っているのだ。2年前の2015年大会(当時:東アジアカップ)を制した北朝鮮の女子チームにも、金正恩第一書記から高級車やマンションが贈呈され、さらに年金支援などさまざまな特典を授かる“超特別待遇”を受けたという。
 
 彼女たちは人生を懸けて、今大会に挑んできていた。なでしこジャパンは、まさに国を挙げての北朝鮮代表の戦いにピッチ内外で圧倒されたのだ。

【なでしこPHOTO】北朝鮮に攻守で圧倒され、3大会ぶりの優勝逃す…

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェストWeb)
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