レジェンドの背中が教科書だった――38歳の伝道師・坪井慶介が現役にこだわる理由

カテゴリ:Jリーグ

佐藤亮太

2017年11月23日

坪井にとって手本であり、教科書だったのが「アジアの壁」と呼ばれた井原だった。

今季限りで湘南を退団する坪井だが、現役を続ける意向だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

画像を見る

 11月15日。J1昇格を決めた湘南ベルマーレの練習場・馬入ふれあい公園サッカー場天然芝グラウンド。台風の影響で冠水したピッチはほぼ回復。にぎやかな声と曺貴裁監督の声が飛び交う、いつもの風景があった。

 
 全体練習が終わり、選手が三々五々、引き上げるなか、念入りにストレッチを行ない、ピッチを走る姿があった。
 
 坪井慶介、38歳。
 
 簡単な取材を終えると坪井は「じゃ、また」と言い、そっと右手を差し出した。初めてのことに戸惑いながら、握手を交わした。
 
 なぜ、坪井は握手を求めたのか? 答えは2時間後に分かった。チーム関係者から坪井の今季限りの契約満了が内々に告げられた。
 
――◆――◆――
 
「守備についていろいろ教えてもらい、参考にした部分、学ぶことが多かった」(浦和DF/遠藤航)
「ツボさんが一生懸命やっているのに、若い俺らがサボるわけにはいなかった」(浦和MF/菊池大介)
「ゲームでマンマークになった時、一番、嫌なのはやっぱりツボさんかな」(湘南DF/岡本拓也)
 
 スピードと読みの良さを兼ね備えた坪井の守備はいまでも衰えていない。
 
 遠藤、菊池らが主力としてJ1を戦った2015年。36歳の坪井が湘南に加入した。若手が多く、入れ替わりの激しい湘南で坪井は何か説教じみたことを言うわけではなく、ピッチ内外の自身の姿を見せ、“良き手本”となった。
 
 その坪井にとって、手本であり教科書だったのが現役時代「アジアの壁」と呼ばれ、今季はJ2アビスパ福岡で指揮を執る井原正巳だ。
 
 遡ること、15年前の02年。当時、浦和は育成の名手、ハンス・オフト監督のもと、強豪への足掛かりを築いていた。坪井は、そうした時期に福岡大から加入した。選手寮「吾亦紅」には当時、坪井のほか、田中達也、山岸範宏ら若手とともに35歳の井原も寝食を同じくした。
 
 起床後にストレッチをし、食事を摂り、練習で汗を流し、入念に治療をする。多くを語らない井原の一挙手一投足を、坪井らは見続けた。また寮内の風呂では背中を流しながら、自身が戦った98年フランス・ワールドカップの話を聞き、大舞台に思いを馳せた。
 
 背中で語る姿。井原正巳と坪井慶介が自然と重なる。
 
「とても畏れ多い。いまの自分が当時の井原さんのようになっていない、それだけ大きい人。近づけているのかどうかも……。井原さんがかつて僕らに見せてくれたようなプロフェッショナルな姿を言葉だけでなく、伝えなければならない、そう強く思った」
【関連記事】
FC今治でのラストシーズンに懸けた想いの丈を激白! 元日本代表の山田卓也が引退を表明…
湘南が元日本代表・坪井慶介との契約を更新せず…「良いことばかりではなかったですが…」
【FC東京】在籍12年目のベテランDFが“地元”長崎へ完全移籍
【群馬】ラーメン師範の盛田剛平ら3選手と契約せず「ラーメンコラボ第2弾できないのが…」
柴崎岳がいまだ恋しい!? テネリフェSDが「我々にはガクのような選手が必要だ!」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ