レジェンドの軌跡 THE LEGEND STORY――第29回・ロマーリオ(元ブラジル代表)

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サッカーダイジェストWeb編集部

2017年10月19日

強気の姿勢を崩さない有言実行の点取り屋

在籍したほとんどのチームで、すぐにフィットしてゴールを奪う力は驚異的だった。ブラジル、オランダ、スペイン、アメリカでリーグ得点王に輝き、キャリアにおいて10回のリーグ優勝を経験した。写真はバルサ時代。 (C) Getty Images

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 本誌ワールドサッカーダイジェストと大人気サッカーアプリゲーム・ポケサカとのコラボで毎月お送りしている「レジェンドの言魂」では、サッカー史を彩った偉大なるスーパースターが、自身の栄光に満ちたキャリアを回想しながら、現在のサッカー界にも貴重なアドバイスと激励を送っている。
 
 さて今回、サッカーダイジェストWebに登場するのは、優れたテクニックと的確な動き、そしてペナルティーエリア内での見事な駆け引きで次々に敵のゴールを陥れた天性のストライカー、ロマーリオだ。
 
 渡り歩いた多くのクラブで得点を重ねて大金字塔を打ち立て、ブラジル代表としては母国を世界一に導いた、有言実行の強気な偉人の軌跡を、ここで振り返ってみよう。
 
――◇――◇――
 
 1966年1月29日、ロマーリオ・デ・ソウザ・ファリアは、ブラジル・リオデジャネイロで生まれた。貧しい家庭に育った彼は、サッカー王国に生まれた子どもとしては当然のように、幼い頃からこの競技に没頭した。
 
 後に大成した時、彼は「俺が生まれた時、神様が空から俺を指差し、『お前は選ばれし者だ』と告げた」と語っているが、実際、幼少期から技術的に秀でていたのは事実である。
 
 リオ郊外のオラリオというクラブでサッカーの基本を身につけ、81年に名門バスコ・ダ・ガマのユースチームに入団。ここですぐに頭角を現わし、85年の2月6日、全国選手権のコリチーバ戦でプロデビューを飾った。
 
 初年度からリオ州選手権では21試合で11ゴールを挙げ、全国選手権では2年目に23試合出場9得点を記録。その後も、公式戦で2ケタ得点を続けた彼には、欧州からも注目が向けられるようになった。
 
 バスコでの4シーズンで2度のリオ選手権優勝に貢献した若きストライカーは、88年に欧州挑戦を開始する。加入したのは、オランダのPSVだった。
 
 デビューイヤーでさっそくリーグ優勝に貢献。公式戦34試合で26ゴールを挙げたが、そのなかには88年12月、東京・国立競技場で行なわれたナシオナル(ウルグアイ)とのトヨタカップで挙げたヘディングによる1点も含まれている(試合はPK戦の末に敗北)。
 
 バスコ時代にリオ選手権で2度の得点王に輝いていたロマーリオの得点嗅覚と能力は、気候も文化も、そしてサッカーのスタイルも全く異なるオランダでも全く鈍ることなく、彼はPSV在籍の5シーズン、167試合で165得点を記録し、88-89シーズンから3年連続でリーグ得点王となった。
 
 自信に満ち溢れ、尊大とも言える態度を取るブラジル人は、何かと論争の種となったが、「俺は必ずゴールを奪う」と豪語する彼は、試合前は自信過剰と嘲笑されながらも、試合後には有言実行の頼れるストライカーとして称賛され、当時の指揮官、フース・ヒディンクを感心させた。
 
 ブラジル人らしい高度なテクニックを有し、プレーの緩急の付け方が絶妙で、相手選手との駆け引きにも長けていたロマーリオには、あらゆるかたちでゴールを奪う術が備わっていた。両足はもちろん、167センチの身長でも、位置取りとタイミングの妙で屈強なDFに競り勝った。
 
 すでに世界屈指の点取り屋として君臨していたロマーリオが、欧州の中堅リーグであるオランダに留まり続けられるわけはなく、93年、彼はスペインに上陸。ヨハン・クライフに率いられた「ドリームチーム」バルセロナに加わった。
 
 リーガ・エスパニョーラでのデビューシーズン、ロマーリオが公約に掲げたのは「30得点」。簡単ではない目標だったが、フリスト・ストイチコフらと強力な攻撃陣を組んだ彼は、新たな環境においても次々にゴールを積み重ねていく。宿敵レアル・マドリー戦ではハットトリックを記録し、ファンの心を鷲掴みにした。
 
 そして最終節、セビージャ戦でロマーリオは約束通り、30点目をゲット。彼のゴールなどで5-2の大勝を飾ったバルサは、勝点1差で首位を走っていたデポルティボが終了間際にPKを外して勝利を逃したことにより、3シーズン連続で最終節での逆転優勝を飾った。
 
 こうしてチーム、個人でも結果を残した93-94シーズンのロマーリオだったが、終盤戦になると、シーズン後のアメリカ・ワールドカップを見越して体力を温存するようなプレーを見せたことをクライフ監督に咎められ、そこから両者の関係は急速に悪化していく。
 
 チャンピオンズ・リーグ決勝で圧倒的有利と予想されたミラン戦で、相手のプレッシャーに屈して0-4の完敗を喫すると、「ドリームチーム」は瓦解。ロマーリオは、2シーズン目途中の95年1月、契約解除を申し出てバルサを去って行った。
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