帰ってきた名将ハインケスはバイエルンの何を変えるのか? そして何が変わる?

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年10月12日

3冠達成時のスタッフ勢揃いで巻き返しを図る

クラブ史に残る2013年の3冠を成し遂げた名将ハインケス。バイエルンをシーズン途中で率いるのは、終盤の残り5試合で指揮を執った08-09シーズン以来2回目である。写真は03年のCL優勝時。 (C) Getty Images

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 カルロ・アンチェロッティの解任を噂する人はいたとしても、まさか本当にされるとは誰も思っていなかったことだろう。序盤の躓きはどんなクラブでも起こりうること。シーズンはまだ長い。むしろ、ここからが腕の見せどころだと思われていた。

 だが、改善の兆しが見られないことに、選手や首脳陣の不満は想像以上に膨れ上がってしまっていた。昨シーズン、チームとしての成長が見られなかったことで、アンチェロッティの手腕を疑問視する声が上がっていたことは事実である。
 
 プレシーズンから一向に負荷の上がらないトレーニング内容に、アリエン・ロッベンが、自身の息子が所属するDユース(U-13)の方がまともな練習をしていると首脳陣に直訴したことがあったと『ビルト』紙が報じていた。
 
 だが、それでも変わらなかった。変われなかったのか、変わろうとしなかったのか、変わる必要がないと思ったのか……。
 
 アンチェロッティは、どんなプランで立てていたのだろうか。元々、シーズンを通してプランニングする指導者だ。彼からすれば、序盤の不調も計算の範囲だったのかもしれない。だが、今となってはもう、彼の腹積もりを知ることはできない。
 
 アンチェロッティの問題は、スタメン決断の理由が結果として表われなかったことにある。スタメンで起用された選手が、監督のイメージ通りのプレーで勝利に貢献すれば、「なるほど、そのための起用だったのか」と説得させることができる。
 
 もちろん、そうしたイメージはアンチェロッティも持ってはいたことだろう。
 
 例えばチャンピオンズ・リーグ(CL)では、強力な攻撃陣を誇るパリ・サンジェルマンを前に、センターハーフ・タイプを3人並べることで中央の守りを固くしながら、中盤の構成力を上げ、ボールをうまく保持しつつ、攻撃のリズムを作ろうとした。
 
 だが、ネイマールにあっさりと突破を許してダニエウ・アウベスに先制ゴールを決められたシーンからも分かる通り、これが全くハマらなかった。機能しないサッカーを見て、ベンチスタートを余儀なくされた選手は「そら見たことか」と、起用法自体に不満を抱く。
 
 何かがチームのなかで、プツリと音を立てて切れてしまったようだった。
 
 そんなチームに、救世主として迎え入れられたのがユップ・ハインケスだ。72歳ながら、「体調も良いし、気持ちもまだ新鮮だ」と意欲を口にしている。
 
 トーマス・トゥヘルやユリアン・ナーゲルスマンという名前が後任候補としてメディアに何度も登場していたが、首脳陣は危機的状況の今、クラブのことを知らない新顔を起用するべきではないという結論に達し、ハインケスに託した。
 
 万全の態勢を整えようと、クラブも最大限のサポートを施した。
 
 かつてのハインケスの盟友で、これまでデュッセルドルフのアシスタントコーチを務めていたペーター・ヘアマンを獲得するべく、アシスタントコーチの移籍金としてはブンデスリーガ最高額となる175万ユーロ(約2億2800万円)を支払った。
 
 そして、バイエルンの育成部長となっていたヘアマン・ゲルランドを、アシスタントコーチに戻した。
 
 3冠を達成した時のスタッフ勢揃いで、巻き返しを図るつもりなのだ。
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