無名の若きサムライが、遠いボスニアの地で古豪とプロ契約!

カテゴリ:海外日本人

森本高史

2017年06月24日

まさに七転び八起き。紆余曲折を経てボスニアへ。

春に高校を卒業したばかりの18歳。「ボスニアで活躍してビッグリーグにステップアップしたい」と意気込む。

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 ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督の母国、ボスニア・ヘルツェゴビナで、雌伏の時を過ごす“サムライ”がいるのをご存じだろうか。
 
 2016-17シーズンに2部リーグで優勝を果たし、プレミアリーグ昇格を決めたFKボラツ・バニャ・ルカ。6年前にプレミアリーグを制した古豪と3年契約を結んだのが、鈴木梨生(すずき・りお)だ。
 
 この春に千葉明徳高校を卒業したばかりの18歳(1998年7月15日生まれ、173センチ・63キロ) 。トップ下、ボランチ、左サイドハーフをこなす万能性があり、広い視野を武器に、ロングパス、サイドチェンジで攻撃にリズムを生み出す。さらにしなやかなドリブルで攻め上がり、フィニッシュに持ち込むプレーも得意だ。
 
 とはいえ鈴木は、各年代の日本代表に選出された経験はなく、Jクラブが熱視線を送っていたわけでもない。いわば無名の若者だった彼が、いったいどのような経緯でボスニアのプロクラブと契約するに至ったのか。なかなかの紆余曲折があった。
 
 きっかけは昨年6月、首都圏で開催された「第8回世界プロサッカー挑戦セレクション」だった。ベルギーの名門アンデルレヒトのスカウト、ダニー・ボッファン氏が日本人選手獲得のため来日。ワールドカップ3回出場の輝かしい実績を誇る氏は、特別選考会に参加した鈴木のプレーを観て感銘を受けたという。
 
「高度なテクニックと広い視野を持っていて、ビューティフルなパスを次々と通す。しかも相手の嫌がるところにだ。かつて一緒にプレーしたエンツォ・シーフォを思い出したよ。アンデレレヒトに連れて帰りたいくらいだ」
 
 どこまで本気だったかは分からないが、名スカウトに太鼓判を押され、鈴木の夢は膨らんだ。高校卒業のタイミングで欧州挑戦をスタートさせるべく、冬の移籍市場でのアピールに賭けた。
 
 そして昨年12月、今度はチェコの名門スラビア・プラハが関心を寄せた。U-21チームの指揮官は、かつてジェフ市原やコンサドーレ札幌でプレーし、ヴィッセル神戸では監督を務めたパベル・ジェハーク氏だ。
 
 選考会のビデオを観て、「素晴らしいのひと言。若い選手なので最初はU-21からになるが、結果を残してトップチームに昇格できれば、カレル・ポボルスキのように『スラビア経由プレミアリーグ行き』を果たせるかもしれない」と興味を抱いた。
 
 しかしながら、またしても入団は実現しない。
 
 スラビア・プラハの経営陣には中国資本が入っており、「日本人選手と契約するなんてもってのほか」と、上層部が信じられない理由で入団を拒否したという。揺れる日中関係が、遠いヨーロッパでプロ選手を目ざす若者の進路にも影響を与えたのが、残念でならない。

 それでも鈴木は、「スラビア・プラハが僕に興味を持ってくれたのは大きな自信になる」とポジティブに捉え、すぐに意識を切り替えた。

FKボラツのトリブノビッチ監督と話し込む。チームに合流して3か月、コミュニケーションもスムーズになってきた。

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