［J1リーグ・８節］柏 ２-０ 横浜／2017年４月21日／日立柏サッカー場
 
　63分だった。ダビド・バブンスキーがピッチに送り出される。２点のビハインドを背負う中、状況を打開する切り札に指名されたのだ。
 
　トップ下に陣取ったマケドニア代表MFは、「監督から言われていた通り、２点差を引っ繰り返してやろうと思っていた」という言葉通り、積極的にボールを受ける。バルセロナの下部組織出身というキャリアは伊達ではなく、テクニックとアジリティ―は目を見張るべきレベル。ボールを晒しながら両足の細かいタッチとタイミングの妙で敵を翻弄する姿は、いかにもな「バルサの匂い」を漂わせていた。
 
　しかし、「自分のアイデアで流れを変えたいと思っていた。しっかりターンをして、前を向きたいと。両サイドの前田（直輝）と齋藤（学）を使ってどう違いを使っていくかを考えていた」という目論見通りにはいかず、自身のシュートも決定機に繋がるパスも出せぬまま、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
 
　セルビアのレッドスターから今オフに加入したバブンスキーは、開幕から２試合連続でインパクトの大きいゴールを決めて一気に名を揚げる。しかし、３節以降はその勢いに陰りが見え、５節に続いてこの８節もスタメン落ち。守備力にやや物足りないこともあり、エリク・モンバエルツ監督から「今週の練習から、戦術的な理由で先発させないと言われていた」という。
 
　とはいえ、「監督の指示にはもちろん従うし、チームとして戦っている以上、スタメンでもベンチスタートでも関係ない。ピッチに入った時に結果を残せるかが大事」と腐る様子は微塵もなく、「まだシーズンは始まったばかりだし、課題はたくさんある。みんなでそれを克服したい」といたって前向きだ。
 
　柏戦のようにエースの齋藤が封じられると、攻撃が一気にトーンダウンする今シーズンの横浜。その中でバブンスキーが持ち前の打開力を発揮してトップ下でこれまで以上にプレゼンスを放てば、背番号10へのマークが多少なりとも軽減され、チームのオフェンスが活性化するのは間違いない。
 
　開幕２戦連発といういきなりの活躍、見栄えの良いテクニック、そして甘いマスクもあってか、日立台に詰め掛けたファンの着ていたユニホームは「33」が予想以上に多かった。指揮官やチームメイトはもちろん、サポーターも寄せる大きな期待に、23歳の逸材は応えられるか。要注目だ。
 
取材・文：白鳥大知（サッカーダイジェストWEB）
 
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