【蹴球日本を考える】問題処理能力の高いクラブ・アメリカが見せた敵の懐に潜り込む術

カテゴリ:連載・コラム

熊崎敬

2016年12月12日

全北対クラブ・アメリカは異なるスタイルがぶつかり合った好勝負に。

全北現代との準々決勝を2-1で制したクラブ・アメリカ。15日のレアル・マドリー戦でいかなる戦いを見せてくれるだろうか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 クラブ・アメリカが全北現代を逆転した一戦は、とてもいいゲームだった。吹田スタジアムに足を運んだ1万4587人は、サッカーの魅力と勝負の醍醐味を存分に堪能したに違いない。
 
 異なるスタイルが正面からぶつかり合った好勝負。全北は197センチのハイタワー、キム・シンウクを軸にダイナミックな攻撃を仕掛け、一方のクラブ・アメリカは卓越したテクニックを前面に押し出す。とりわけ私を魅了したのは後者だった。
 
 メキシコの盟主に君臨するクラブ・アメリカ。このチームの選手たちは個人技が非常に高い。
 
 複数の敵に囲まれて危ないという場面で悠々と浮き球を繰り出し、なんでもない横パスをつなぐかと思うと身体を捻じるようにして不意に縦のコースを突いてくる。
 記者席からゲームを見下ろしている記者が時折、騙されるのだから、平面で戦っている全北の選手たちは、さぞかし苦労したことだろう。
 
 スキルフルなクラブ・アメリカの面々は、こういうふうに形容することができると思う。
 それは「問題処理能力が非常に高い」ということだ。
 
 サッカーとは互いにプレッシャーをかけ合って、敵をトラブルに陥れる意地悪なスポーツ。だが全北戦のクラブ・アメリカは、プレッシャーにほとんど動じることがなかった。それどころかむしろ、プレッシャーを逆手に取って全北を揺さぶっていた。
 
 自らに課せられた問題を処理し、同時に敵をトラブルに陥れる。こうした能力は、幼い頃からの路地裏の遊びで培われたのではないだろうか。
 
 クラブ・アメリカは地元メキシコ人にパラグアイ人、アルゼンチン人、ブラジル人といった南米勢で構成される。いずれもストリートサッカーが盛んな国だ。
 ストリートサッカーの最小単位は1対1。目の前の敵を抜くか抜かれるかだ。これをやっていると自然とプレッシャーに強くなる。日本に欠けているものといってもいい。
 
 クラブ・アメリカ最大の強み、それはいままで語ってきたプレッシャーに強い個人が、集団として高度なコンビネーションを見せるところにある。
 彼らは激しい全北の守りに臆するどころか、敵の懐に果敢に潜り込み、何度もワンツーで中央突破を成功させた。
 
 AとBがワンツーを交わすと、今度は絶妙なタイミングでCが出てきてAとCがワンツーを敢行。畳みかけるようなワンツーの連続で敵を崩し、気がつけばDがゴール前で余っている。
 フィニッシュは精度を欠いたが、全北戦ではこうした場面が何度もあった。
 
 プレッシャーに強い個人が、強い組織を編み出すクラブ・アメリカ。彼らがレアル・マドリーをどこまで苦しめることができるか、これはちょっとした見どころである。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
 
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