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U-16からA代表まで…日本に立ちはだかるイラクサッカー。過酷な状況でなお輝き放つ不屈のチーム

カテゴリ:日本代表

川端暁彦

2016年10月17日

湾岸・イラク戦争で国家体制は崩壊するもイラクサッカーは力強い輝きを維持。

10月6日のイラク戦では終了間際の山口の決勝弾でなんとか辛勝を収めた日本だが、ホーム戦ながら最後まで苦しめられた。(C) SOCCER DIGEST

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 昨年3月、ひとつの悲報を伝え聞いた。イラクの五輪代表候補になっていたDFマフディ・アブドゥル・ザフラ(当時19歳)が爆弾テロに巻き込まれ、死亡したというものだった。日本も参加した2013年のU-17ワールドカップに出場し、その後U-19代表、そして五輪代表候補へとステップアップしてきたタレントを失うというニュースに衝撃を覚えないはずもない。
 
 ただ、悲しいことに爆弾テロはイラクにおける非日常ではなく、サッカーのスタジアムや少年サッカーの会場がターゲットになった悲劇はいくつも起きている。国内最大の人気スポーツであり、国民が愛してやまない場だからこそ、卑劣なテロリズムの標的にもなってしまう、なんとも言えない構図がそこにはある。
 
 知っての通り、1991年の湾岸戦争、そして2003年から実質9年近くに渡ったイラク戦争によって同国の国家体制は一度崩壊。現在に至ってなお安定とは言いがたい状況が続いているわけだが、しかしそれでもイラクのサッカーは命脈を保ち続けるどころか、むしろ力強い輝きを維持している。
 
 21世紀に入っても、彼らはアジアの列強であり続けた。2004年のアテネ五輪4強という快挙を筆頭に、2008年のアジアカップ制覇、2013年のU-20ワールドカップ4強などなど、各大会で好成績を記録。日本とも年代別の大会でしばしば激突してきたが、どうにも分が悪かったのは否めない。特にリオ五輪世代は、2012年のU-19アジア選手権準々決勝などでイラクに苦杯をなめさせられることが多かった。
 
 戦火の中でもサッカーへの情熱を失わず、新たなタレントを育て続けているイラクの在野に数多くいるであろう指導者たちには頭が下がる思いだ。もともと1993年の“ドーハの悲劇”でそうだったように、劣勢でも諦めず、最後まで食らい付いていくのがイラクのスタイルである。
 
 今年1月のリオ五輪予選を兼ねたU-23アジア選手権でも、準決勝で日本に惜敗しながら、3位決定戦ではメンタル的に立て直し、開催地のカタールを向こうに回しての死闘を制して最後の出場切符を手にしてみせた。その勇戦ぶりとサポーター含めた試合後の歓喜は、彼らが背負っているものの大きさをあらためて教えてくれるものだった。
 
 U-23アジア選手権で、イラクの陣容はベストメンバーからほど遠かった。協会の組織力、財力の問題もあるのだろう。そもそも公式大会のホームゲーム開催をFIFAから治安上の理由から禁じられている立場なのだから、財政基盤が脆くなるのも無理はない。
 
 2014年のアジア競技大会では、大会が始まってから徐々にメンバーが合流していくという難しい状況にあることに驚かされたが(それでもグループリーグで日本を破り、最終的には銅メダル)、しばしば「不屈」と評されるイラクのタフさを思い知らされた。そしてリオ五輪本大会では最強チームのブラジル相手に粘りのドローゲームを演じてみせた。
 
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