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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十六「守備者の本質を曖昧にする『“攻撃的”をありがたがる』風潮」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年08月31日

内田の攻撃参加は守りに重点を置いた「ディフェンダーの仕事」

SBも重要な攻撃の駒であることは間違いないが、通常、全てのプレーは守備の安定を前提にして行なわれるべきである。 (C) Getty Images

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「攻撃的」
 
 その形容詞は、日本サッカー界で“無双の力”を持つがごとくに用いられている。
 
 攻撃的なボランチ、攻撃的なSB、攻撃的なCB、果ては攻撃的なGK……。「攻撃的」という形容詞をつけるだけで、エクストラな魅力が高まって、一気に“お買い得感”が増す。
 
「スピーディーな攻め上がりが抜群に良い!」
 
 そんな言い回しで激賞されるのだ。
 
 当然のことだが、攻撃的と形容されるのは、ディフェンシブなポジションの選手である。オフェンシブなポジションの選手には使われない。守備的選手が攻撃的であったら、「完全無欠」ということになるのだろうか。
 
 しかしながら、実際はそんな都合の良い話はそうあるものではない。守備能力の足りない面を、攻撃的という部分で補っているケースがほとんどだろう。
 
 言い換えれば、守ることを仕事とする選手の本質を曖昧にしてしまっている。攻撃的であることが美徳として語られることで、本来の仕事ができない選手が生まれてしまっているのだ。
 
 これはほとんど、ホラー現象と言える。
 
 攻撃的――。
 
 その修飾句は、サッカーを危うくする表現と断じるべきだろう。
 
 そもそも、何をもって攻撃的とするのか。Jリーグでは、CBがボールをこねるだけで、「フィードが上手い」と語られる。始末が悪いことに、褒め称えられたCBは、ロングパスをどうにか打ち込もうと、さらにこね回す癖をつけ、結果的にプレースピードを落としてしまう。
 
 本当に攻撃的なCBとは、即決果断にパスを出し、その後の攻撃を促すものなのだが……。
 
 SBの批評も、攻撃的の部分がクローズアップされ過ぎている。
 
 例えば、内田篤人は攻撃的かもしれない。しかし、彼は闇雲に攻め上がってクロスを打ち込んだり、ドリブルで仕掛けたりしているわけではなく、機を見るのに敏で、その判断が抜きん出ている。
 
 攻撃で押し込むことによって、守りでも優勢に進められる。つまり、「ディフェンダーの仕事」をしているのだ。
 
 しかし、内田の「先手を取る」プレーだけに焦点を当てていては、物事を見誤ることになるだろう。
 
 内田は「後の先を取る」センスにも長けている。守りにおいての準備が万全で、常に予測によって相手よりも良いポジションを取り、敵の癖を読み取っており、そのインテリジェンスによって相手を翻弄している。
 
 攻撃的なSBなどという表現は、的外れなのである。
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