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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の六十九「“戦術”と“戦略”の関係を正しく理解できているか!?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年05月05日

嫌悪されたベニテスと神格化されたモウリーニョの違いとは?

戦術に選手を当てはめるか、選手の合った戦術を選ぶか――。どちらのアプローチも間違ってはいないが、そのためには選手の特性やその時々の状況をしっかり見極めなければならない。 (C) REUTERS/SUN

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「戦術」
 
 それは今や、サッカー界で日常的に使われる。
 
 しかし、元々は幕末にオランダ語で書かれた兵術書にある“タクチーキ”を和訳した言葉である。特殊な軍事用語で、日本で一般に知られてからの歴史は浅い。
 
 戦術とは、軍事的な作戦、戦闘において任務達成のために行なわれる運用術を指す。例えば、部隊や物資を適切に配置、移動し、目の前の戦闘を有利にするのだ。
 
 数学的、理論的な思考を基にしており、戦う前からいかに優位に立ち、勝利を収めるか、の準備とも言い換えられるかもしれない。局面において、彼我の戦力や特徴を見抜き、判断しつつ、人が1個の機械の部品のように動けば勝てる、という想定を持ち、戦いに臨んで応変に事にあたる。
 
 戦術は、勝利のためのロジックとも言えるだろう。
 
 ロジックには、いくらか冷たい響きが含まれる。それは、数字や理論が怜悧さを含んでいるからかもしれない。
 
 おそらく現場で戦う兵士としては、承伏できない一面もあっただろう。実戦では、常に不測の事態が起こる。そのロジックが正当であればあるほど、現場で働く人間たちは、そこに白々しさを覚えてしまうのだ。
 
 ピッチで戦う選手たちも、同じ気持ちになることがあるだろう。
 
 事実、レアル・マドリーの監督を務めていたラファエル・ベニテスは、スター選手たちに戦術を強調しすぎた。
 
 彼は、ディフェンスラインの上げ下げや、ラインをコンパクトに保つことだけに固執。選手に理論を強引に押しつけたことにより、しまいには総スカンを食らってしまった。
 
 たとえ正解であっても、戦術が機能しないことはある。サッカーは人が行なう競技であり、数式で導くことのできない部分を含む競技なのである。
 
 もっとも、戦術をうまく運用することで、勝利への効率が高まることは間違いない。
 
 その技量に長けている指揮官が、来シーズンのマンチェスター・ユナイテッド監督就任が噂されているジョゼ・モウリーニョだ。
 
 選手に密かに授けた策がことごとく当たり、それが勝利に結び付く。その時、モウリーニョの存在は神格化され、戦術の効果は一気に増す。
 
 戦術を運用する選手たちが、信じて作業を行なうことで、効率が向上する。それによって、戦術そのものの機能性も高まる。その相乗効果が、神業的な勝利に結び付くのである。
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