【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の六十一「監督の真にあるべき姿とは?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年03月10日

最高の権限を持つと同時に全ての責任を背負う監督という役割。

名将ペップといえども、全てのチームを勝たせられるわけではない。しかし必要な戦力を得られる状況おいては、選手から最大限の力を引き出し、最高級の内容を伴って勝利を量産することができる。 (C) Getty Images

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「選手を20人も入れ替えることができない。だからこそ、最高責任者である監督がいるのさ。監督なら、1人を代えるだけでいい」
 
 それは、欧州のサッカー界で語られる、チームマネジメントの常識である。
 
 監督は集団の“統率者”として、権利と義務を持っている。その決断は、誰からも尊重されなければならない。一方で結果が出ない時、状況が好転しない時、プレーに光明が見えない時、監督は責任を取る立場にある。
 
 なぜなら、もし選手を総入れ替えして失敗した場合、チームは土台を失い、そのまま“砂漠化”する危険があるからだ。
 
 しかし、信じられないことに、Jリーグではこうしたケースが珍しくない。とりわけJ2以下のクラブでは、顔ぶれが全く変わってしまう状況が、ごく日常的に起こっている。
 
「財政難でそうするしかなかった」という弁明はもっともらしく聞こえるが、それこそ強化デザインにおける深刻な失態であって、正当化されるべきではない。
 
 Jリーグは「プレーヤーズファースト」という素晴らしいスローガンを掲げているが、20人もの選手が退団するなど、ただ事ではないだろう。
 
 日本という社会は、おしなべて会社側の立場が強い。一方で社員の発言権は弱いという伝統もあり、これでは強いリーダーも生まれにくいだろう。統率者に“覚悟”が生まれないからだ。
 
 そもそも、求められるサッカー監督像とはいかなるものだろうか?
 
「相応の選手がいなければ、自分は(指導者として)何もできない」
 
 バイエルンを率いる名将ジョゼップ・グアルディオラは、そう断言している。彼ほど、フットボールは選手ありき、と心得ている指導者はいないだろう。そう悟った上で、彼は監督としての知識、研究、経験を重ねている。
 
 現役時代の終盤から監督業を見据え、様々な国でプレーし、その国のフットボールを取り込み、バルサにない部分を見極めた。自ら足を運び、多くの指導者と語り合ったりもした。謙虚で、熱心というのか、驕り高ぶったところがない。
 
 グアルディオラは来シーズンから、プレミアリーグのマンチェスター・シティで指揮を執ることが決まっているが、その布石として、ニューヨークで英語を習得している。
 
 シティを選んだのに重視したのは、待遇条件よりも、どういった戦いをするのか、という点。その上で、バルサ時代もスポーツディレクターだったチキ・ベギリスタイン(現在はシティのスポーツディレクター)の元に身を寄せることにした。
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