【広島】「航平、16番を引き継いでくれないか…」清水がこだわりの背番号を変えたわけ

カテゴリ:Jリーグ

中野和也

2016年02月24日

山東魯能戦では先制ゴールに、圧巻の突破力で存在感を見せつける。

今季から背番号を27から16に変更した清水。愛着のある番号ではあったが、伝統の背番号を引き継ぐ覚悟を決めた。

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 マン・オブ・ザ・マッチは、決勝点を決めたジエゴ・タルデッリではなく、清水航平であるべきだった。
 
 ブラジル代表FWでもある山東魯能のエースは、ゴールを決めたその瞬間を除き、ほとんどの場面で消えていたが、清水は違った。試合開始早々から決定的なクロスを供給し、その後も圧倒的な突破力で左サイドを完全制圧。64分には、塩谷司のクロスから皆川佑介がつないだ浮き球を強烈な左足ボレーで逆サイドのネットに突き刺す圧巻のゴールを決めた。
 
 東海大五高時代にインターハイ得点王となった経験を彷彿とさせる「ストライカー」と広島で実績を積み重ねた「チャンスメイカー」、両方の仕事をやりきっていた。主役は、濃紫の16番だったのだ。
 
 今季から清水は8年間背負ってきた「27番」に別れを告げ、背番号16を身につけた。ペトロヴィッチ監督時代に右サイドを務めていた李漢宰(現町田)や主に左サイドで力を発揮した山岸智(現大分)がつけていた、広島のワイドプレーヤーにとっては重みがある番号である。
 
 27番を変えたいと思ったことはなかった。ずっと試合に出られずに苦しんでいた時も、2012年にJリーグベストゴール賞(スカパー!選定)を受賞した時も、27番を背負ってきた。愛着もある。“自分の番号”だという誇りもあった。
 
 だが昨年のオフ、広島を去ることが決まっていた山岸が、ずっとポジションを争っていたライバル・清水にこう切り出したという。
 
「航平、16番を引き継いでくれないか…」
 心が、大きく動いた。
 
「尊敬するヤマさんから背番号のことを言われた時、本当に嬉しかった。そして16番を受け継ぎたいと素直に思ったんです。ヤマさんだけでなく、デビューの頃からお世話になっていたハンジェさんがつけていた番号を頂くということは、16番が創ってきた歴史や責任も含め、僕が背負っていくということ」
 
 クラブからの了承も受け、今季から伝統の16番を背負う清水航平は、肉体的な強さを持つ山東魯能に対し、一歩も引かず、仕掛けに仕掛けた。逆サイドのクロスに飛び込んでシュートを撃つ練習どおりの形でゴールも奪った。だが、結果はわずかな隙を突かれての逆転負け。シュート20本を打ち続け、決定機の数も質も大きく上回っていたのに。
 
「チャンスできっちりと決めていれば、もっと楽にゲームを進められた。本当に悔しい」
ヒーローになり損ねた16番はそう唇を噛みしめる。
 
 だが、まだACLは開幕したばかり。「切り替えるしかない」と16番は前を向く。次は3月1日、高萩洋次郎が待つFCソウルとのアウェーマッチだ。
 
取材・文:中野和也(フリーライター)
 
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