11月14日、ノルウェーをホームで２-１と下し、来夏にフランスで開催されるEURO本大会出場を決めたハンガリー。1972年大会以来、長い空白がようやく埋められることとなった。
 
　今大会予選で３人目の監督となったドイツ人のベルント・シュトルク監督は「チームにおめでとうと言いたい。彼らが見せた戦いのレベルや激しさは見事だった。100パーセント、フランスへ行くにふさわしい」と、下馬評を覆した選手たちを称賛した。
 
　当然、選手たちも喜びを爆発させた。39歳の大ベテランで、キャリアの初期からグレーのロングパンツを愛用し続けているガボル・キラーイは、「まだ信じられない。明日になれば実感が湧くかもしれないね。自分は39歳だが、まだプレーし続けたい」と、来夏の本大会出場にも意欲を見せた。
 
　そんな守護神はまた、感慨深げにこうも語った。
 
「本大会出場が決まった瞬間、これまでの40年間、代表チームに貢献してきた歴代選手や監督のことが頭に浮かんだよ」
 
　ハンガリーが最後にEUROの舞台に上がったのは72年。今から43年前のことである。
 
　これはどれほどの長さだろう。アメリカでウォーターゲート事件が発覚し、日本では連合赤軍によるあさま山荘事件が起こった年、サッカー界では偉大な才能がいくつも誕生している。ジネディーヌ・ジダン、リリアン・テュラム、ルイス・フィーゴ、ルイ・コスタ、パベル・ネドベド……（日本人では森島寛晃、岩本輝雄、岡野雅行など）。
 
　これら偉大な選手たちは、ずっと以前にユニホームを脱ぎ、今や指導者、クラブのフロントといった役割でその手腕を発揮している。ひとりの人生がこれほど移り変わるほど、43年という年月は長いということだ。
 
　日本代表で考えてみると、もっと分かりやすいかもしれない。日本が最初にワールドカップ予選に出場したのが1954年スイス大会。そして悲願を達成したのが98年フランス大会で、その間44年の年月が経っている。
 
　もっとも、プロ化するまでの日本サッカーにとって、ワールドカップは手の届かない無縁のものと認識されていた感があった。その点、68年大会のメキシコシティで銅メダルを獲得したオリンピックの方が現実的な目標だったが、この栄光の68年大会を最後に日本は大舞台から姿を消した。
 
　長い長い空白時間を終わらせ、あの最強ブラジル相手に世紀の大番狂わせを演じた96年アトランタ大会までに要した年月は28年。オールドファンであれば、あの期待と失望を繰り返した長き暗黒の時代を覚えていることだろう。
 
　しかしハンガリーの場合、これにさらに16年を加えた年月を、「この国にとっての快挙」（キラリ）である今回の予選突破までに費やしたのである。
 
　ハンガリーといえば、戦前からサッカー強国とし世界にその名を知られ、1950年初頭には33連勝という大記録を樹立。ウェンブリーでは無敗だったイングランド相手に大勝を収め、54年ワールドカップでは準優勝に輝いた。
 
　フェレンツ・プスカシュ、ゾルタン・チボール、サンドール・コチシュ、ナンドール・ヒデクチといった世界的な名手を輩出したハンガリーは、しかし国の動乱などで主力選手が次々に亡命し、徐々にその力を落としていった。