【U-19女子アジア選手権】世界への切符を手繰り寄せた高倉監督のマネジメント力

カテゴリ:日本代表

馬見新拓郎

2015年09月02日

5試合で12得点と、高い攻撃力を武器に大会を制す。

PK戦までもつれ込んだ北朝鮮との決勝戦を制し、2大会ぶりの優勝を果たした“ヤングなでしこ”。来年のU-20女子ワールドカップへの出場を決めた。写真:JFA

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 中国・南京で行なわれたU-19女子アジア選手権で、“ヤングなでしこ”が、2大会ぶりの優勝を果たし、来年、パプアニューギニアで開催されるU-20女子ワールドカップの出場権を獲得した。この栄冠の背景には選手個々の大きな成長と、指揮官の見事なマネジメント力があった。
 
 2年前の同大会では韓国、北朝鮮、中国の後塵を拝し、世界への切符を逃した日本。今大会はその反省を活かし、通常より約半年早くチームを立ち上げた。
 
 その成果として、連係面が大きく向上。本大会ではパスワークで他国を圧倒し、個人でも大会最優秀選手に輝いたFW小林里歌子(常盤木学園高)、積極的なドリブルが光ったMF西田明華(C大阪堺L)、決勝で屈強な北朝鮮選手に競り勝ったDF北川ひかる(JFAアカデミー福島)、土壇場で強烈なキャプテンシーを発揮したDF乗松瑠華(浦和L)らの成長が目立った。
 
 また、高倉麻子監督の手腕も目を引いた。昨年のU-17女子ワールドカップ(コスタリカ)で世界一に輝いた指揮官は、同大会の優勝メンバーと、2年前のアジア選手権を経験したメンバーを中心に、「この年代は1学年ごとにいい選手がいる。普段は目につかないチームにも隠れた存在がいるのではないか」と、視察を重ね、チーム作りを進めてきた。
 
 実際になでしこリーグや全日本高校女子選手権など、あらゆる現場に高倉監督の姿はあった。こうした地道な活動が優勝の要因になったと言える。
 
 さらに、高倉監督は強化段階で、背番号を固定せず、「どんな状況でもいい判断をできる選手」を基準に、さまざまな人材をピッチに送り出した。
 
 決勝戦前日の練習では、これまで主力とはいえなかったDF松原志歩(C大阪堺L)を右SBに、DF宮川麻都(メニーナ)をボランチで起用し、周囲を驚かせた。そして「元々このチームにファーストチーム、セカンドチームはない。いろんな選手を試す機会が、たまたま決勝の前日だっただけ」と淡々と話し、実際に決勝戦で松原と宮川を先発起用し、北朝鮮の攻撃を阻んだ。
 
 さらに、指揮官はチームに持ち前の攻撃力を存分に発揮させ、本大会では5試合で12得点という結果を残した。
 
 なでしこジャパンの佐々木則夫監督は「インターナショナルな力を持った選手が存在する」と今回のヤングなでしこを評価する。
 
 ただ、5世代前からこの年代を取材する筆者としては、現状のチームに物足りなさを感じるのも確かだ。チームとして甘さがあり、来年のU-20女子ワールドカップでは、決勝トーナメントに進出できたとしても、さらに上を目指すには厳しいのではないかと予想する。やはり世界に比べれば、アジアの戦いでは対戦相手が未熟すぎた面もある。
 
 では、ここからどういった強化を進めるのか――。
 
 高倉監督は「この子たちが(東京五輪のある)2020年にちょうどいい年齢を迎えるのは確か。だけど、今、分かっているのはそのことだけ。実際にいい状況で2020年を迎えられるかは、本人たち次第」と語る。
 
 2020年につなげるためにも、今大会に参加した23人だけでなく、同世代の選手が、来年10月のU-20女子ワールドカップで良い意味でのサプライズを起こす必要がある。そしてその活躍は、必ず未来につながるはずだ。
 
■U-19女子アジア選手権中国2015結果
【予選グループ】
・第1戦
日本 2-0 オーストラリア
日本の得点者/小林×2 
 
・第2戦
日本 6-0 ウズベキスタン
日本の得点者/日=清家×3、園田×2、長谷川
 
・第3戦
日本 3-2 中国
日本の得点者/日=小林、西田、北川 
 
【準決勝】
日本 1-0 韓国
日本の得点者/小林
 
【決勝】
日本 0(4PK2)0 北朝鮮
 
取材・文:馬見新拓郎(フリーライター)
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